「ものづくり大国・日本」だからこそ実現できる、STEAM教育とはいったい? なぜインター校では「掃除機を分解させる」のか
STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた教育概念だ。日本の学校ではこれまでSTEM教育として、Art(芸術・リベラルアーツ)の要素が抜けている場合が少なくなかった。しかし、インターナショナルスクールでは従来から、このArtを取り入れたSTEAM教育に力を入れているという。
「ものづくりには、ユーザーインターフェースが欠かせません。それには、どのように使いやすいデザインにするのかという思考と技術が必要です。それと同時に、作り上げたものをプレゼンテーションし、アピールすることも大事になってきます。そうした能力を身に付けていくのに、Artの要素を学ぶことは非常に重要です。ユーザーに使いやすいデザインを考えることも、心に響くプレゼンテーションを行うこともArtの一つだからです。日本のインターナショナルスクールでは数学的な要素だけでなく、芸術や演劇、リベラルアーツを基にしたArtの要素を必要不可欠なものと考え、しっかりと教えています」
「STEAM×Makers×起業家教育」を実践
それだけではない。STEAM教育の本来の目的は、Makers=モノづくりにある。そのため、インターナショナルスクールでは授業でインプットするだけでなく、どうやってアウトプットするのかも重視しているという。
「現在の日本のSTEAM教育では、一種の教養や知識をインプットして理系的な視点を身に付けるという段階にあるように感じます。しかしインターナショナルスクールでは、知識としてのSTEAMがあるのではなく、社会的課題を解決するために、STEAM的な思考や技術を具体的に学ぼうとしているのです。そのためには、ただ知識をインプットするだけではなく、社会に対して現実的なアウトプットをしていくことが欠かせません。いわば、Makersとして社会にどのような有用な手段を提案していくのか。その力を育むことを重視しているのです」
そのため、インターナショナルスクールでは実践的で探究的な授業により、実際に作って試して、失敗を重ねて学ぶこと、アウトプットをしていくことを、より重視している。そこから社会に受け入れられる発想力やものづくりを身に付けていくのだ。
「例えば、実際に掃除機やエンジンを一度分解し、そこから再度組み直したりして、その仕組みを学ぶことも行っています。身近な素材から製品のプロトタイプを作ることもある。学校でスパナとペンチで油まみれになることもしばしばです。インターナショナルスクールといえば、お上品なイメージがあるかもしれませんが、実は泥臭い職人的な部分を教えると同時に、ものづくりをリスペクトする姿勢も身に付けさせようとしているのです。最近開校した、岩手県にあるハロウ安比校でも『匠の教室』という地域の伝統技術を学べる部屋を用意しているそうです」
あくまで机上の空論ではない、本当に社会に通用する力とは何かを追求する。そのうえでインターナショナルスクールの特徴的な学びの柱となっているものはほかにもある。起業家教育だ。
「起業家教育といえば、米国では子どもが“レモネード売り”から学ぶことがよくあります。そのように、インターナショナルスクールでも、これまで物販などを通じて、起業を学ぶことを中心にした教育が行われてきました。しかし、今ではSTEAMやMakersの授業で学び、生み出した製品やアプリなどを、ネット通販をしてみるなど現実社会でアウトプットしていくことで、物の付加価値や経済合理性、社会との接点を学べるようにしているのです。また、経済・金融関連の授業や、社会起業家などの講演なども盛んに行われています」

















