「ものづくり大国・日本」だからこそ実現できる、STEAM教育とはいったい? なぜインター校では「掃除機を分解させる」のか
「ものづくり大国・日本」を生かした、STEAM教育
STEAM×Makers×起業家教育を実践するインターナショナルスクール。だが、その一方で日本の公教育のSTEAM教育はどのように発展させていけばいいのだろうか。村田氏はこう指摘する。
「日本ではSTEAM教育が弱いイメージを持たれているかもしれませんが、実は学校の外を見れば、日本は世界的に見てもSTEAMの実践教育が強いと言えるのです」
振り返ってみれば、もともと日本は世界に冠たるものづくりの国だった。それは今も変わらない。世界的なメーカーはいくつもあるし、有用な技術を持った町工場や職人は数えきれないほど存在する。日本は文化的にSTEAMを生み出す土壌が街にこそ豊かにあるのだ、と村田氏は強調する。
「こうした私たちの身近にあるSTEAMの要素を学校側が吸収できていないのです。例えば、学校の近くで自動車部品工場を営んでいる経営者や家電量販店の販売員の方々などを学校に呼んで話を聞くだけでもいい。IT業界においても、多くのプログラマーがいます。それだけエンジニアリングに関わる人は、実は私たちの身近にたくさんいるのです。今の学校の先生だけでSTEAM教育をすべて行うことはどう見ても困難です。であれば、外からSTEAMの知識や体験を取り入れればいい。それは、日本のものづくりの伝統を継承すると同時に社会の多様性を理解することにもつながっていくはずです。もっと身近にいる外部人材を活かすことを考えてみるのはどうでしょうか」
かつて「ものづくり大国・日本」を支えてきた仕事は、STEAMが重視される今の時代においても、変わらず重要な仕事なのだ。「ものづくり大国・日本」を支えてきた職人たちこそ、ものづくりの象徴であり、起業家精神の原点に立つ人たちなのである。
では、日本の子どもたちがSTEAMに興味を持つようにしていくために、私たち大人はどのようなことに気をつければいいのだろうか。
「物を作りましょうということはよく言われますが、実はものづくりの原理を知るためには、物を“作ってみる”より“分解する”ほうがいいのです。日本ではどうもその発想が少ないように思います。使えなくなった家電でも何でもいい。まず子どもに分解させてみることが大事なのです。いつだって、子どもは素朴な疑問を持っているものです。その素朴な疑問に対して、親や先生がすぐに正解を教えるのではなく、自らの手で答えを探して見つけられるように導いてあげる。そうすることで、子どもはいろいろなことを面白いと思い、好奇心を持つようになるのです。昔の子どもたちは、頭だけでなく手も動かしていました。日本のものづくりが、今よりもっと強かった時代は、子どもたちは自然の中で興味の赴くままに遊び、ないものは自分たちで作って遊んでいたのです。受験勉強も大事ですが、時には泥だらけ、油まみれになってみる。そこからものづくりの不思議さや面白さが理解できるようになるのです。それがSTEAMを学ぶ力を育んでいくのです」
国際教育評論家、「eduJUMP!」編集長、インターナショナルスクールタイムズ編集長。米カリフォルニア州トーランス生まれの帰国子女。人生初めての学校である幼稚園をわずか2日半で退学になった「爆速退学」の学歴からスタート。帰国後、千葉・埼玉・東京の公立小中高を卒業し、大学では会計学を専攻。帰国子女として、日本の公立学校に通いながら、インターナショナルスクールの教育について興味を持つ。2012年4月に国際教育メディアであるインターナショナルスクールタイムズを創刊し、編集長に就任。その後、都内のインターナショナルスクールの理事長に就任し、学校経営の実務を積む。その後、教育系ベンチャー企業の役員に就任、教育NPOの監事、複数の教育系企業の経営に携わりながら、国際教育評論家およびインターナショナルスクールの経営とメディア、新規プロジェクトの開発を受注するセブンシーズキャピタルホールディングスの代表取締役CEOを務める
(撮影:今井康一)

















