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「物語」が持つ恐ろしい力、断罪の果ての処方箋 TVドラマ、都市伝説、陰道論…物語は「消費財」に

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『ストーリーが世界を滅ぼす』ジョナサン・ゴットシャル 著
ストーリーが世界を滅ぼす 物語があなたの脳を操作する(ジョナサン・ゴットシャル 著、月谷真紀 訳/東洋経済新報社/2200円/320ページ)
[著者プロフィル] Jonathan Gottschall/米ワシントン&ジェファーソン大学英語学科特別研究員。著書に、ボストン・グローブ紙のベストブック・オブ・ザ・イヤー選出の『人はなぜ格闘に魅せられるのか──大学教師がリングに上がって考える』など。

著者の執念がにじみ出た書だ。本書で執拗なまでに展開されるのは、「物語(ストーリー)」が持つ魔力への批判と、その恐ろしい力に屈服せざるをえない私たち人類への警告である。物語にたやすくだまされる人間という種族への著者の疑念は、徹底している。

現代のあらゆる局面に介在する「物語」の負の側面

「泣ける映画が観(み)たい」と口走り、カタルシスを求めてストーリーを「消費」する。私たちのそんな性質は、ネット社会であぶり出されたものだ。デジタル経済が生み出した「監視資本主義」は、物語の消費財化を加速させるばかり。人の行動や思考をデータとして収集するのは、それを用いて、私たちに何かを買わせるためだと著者は主張する。

見たいようにしか現実を見ない人間の哀(かな)しさ、他者への想像力の減退、コミュニケーションを望んでいるようでいて実は自らの信じるストーリーを繰り返すだけの対話とも言えぬやりとり。さまざまなつぶやきが発信されては消えていく現代に、人々がうっすらと感じているやるせなさがある。それらに熱く挑んでいく書と言えるのかもしれない。

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