島根県東部を流れ、宍道湖へと注ぐ斐伊川は、スサノオによるヤマタノオロチ退治神話の舞台として知られる。
スサノオは高天原から出雲国の肥河(斐伊川)の上流、鳥髪の地に降り立った。人の姿を求め上流に向かうと、アシナヅチ、テナヅチ夫婦と少女のクシナダヒメが泣いていた。ヤマタノオロチという、頭が八つ、尾が八つ、体から木が生え、山谷を八つ渡るほど巨大な怪物がクシナダヒメを食べるという。話を聞いたスサノオは、クシナダヒメとの結婚を条件に、オロチ退治を申し出た。
ヤマタノオロチの正体とは?
その戦法とは、繰り返し醸造した強い酒でヤマタノオロチを酔っ払わせるというもの。まんまと酔っ払って寝入ったところを、持っていた剣で体をばらばらに切り散らした。その血は川へと流れ、肥の川は、真っ赤に染まっていった。
ヤマタノオロチは何を表現しているのだろうか。蛇が水神、あるいは水神の使いとされてきたことなどから、ヤマタノオロチとは斐伊川そのものを象徴しており、毎年やってきて娘を食らうという話は、繰り返される斐伊川の氾濫を意味しているという解釈もある。
斐伊川に沿って奥出雲に向かって行くと、ダム湖であるさくらおろち湖がある。訪れたときは、その上に彩雲が出ていた。日本の神話に虹は登場しないが、世界に目を移すと、虹は蛇を象徴すると伝える地域は多い。ヤマタノオロチと出会ったような思いがした。
スサノオ神話を感じる神社めぐりも楽しみたい。スサノオとクシナダヒメが暮らしたと伝えられる地に立つ八重垣神社は、古くから縁結びのご利益で知られ、境内には夫婦椿もある。また、境内の奥の森にある「鏡の池」は、クシナダヒメが水を飲んだり姿を映したりしたと伝えられる。古くから和紙を水に浮かべ、占いをする人でにぎわってきた聖地だ。
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