グーグルグラスはムダなプロジェクトなのか 鳴り物入り新製品は個人向け販売中止に
グーグルXではまた、背中に背負って空中を飛ぶための機械や空中に浮くスケートボードといったものを開発しようとしたこともある。これでは投資家が不安がるのも無理はない。
荒唐無稽なプロジェクトばかりに思えるが、これは誰もが通る道でもある。検索広告の分野では独占的な地位を手にしているグーグルにとって、大金を投じて未来のビジネスの種を探すことは避けられない運命なのだ。
「歴史的に見ても、30~35年前にさかのぼれば、大きな研究開発部門を擁していたのはAT&TやIBMやゼロックスだった」と、ワシントン大学のエド・ラゾースカ教授(コンピュータ科学)は言う。「重要な点は、いずれも事実上の独占状態だったということだ」
グーグルが力を注ぐ、コンピュータサイエンス
グーグルは今も、コアビジネスである検索と深く関わるコンピュータサイエンス関連の研究に相当なカネと時間を注ぎ込んでいる。
たとえば2年前、同社はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のグーグルプラスに、「犬」とか「ジュエリー」といったキーワードでユーザーが自分の写真を検索できる機能を導入した。その背景には、コンピュータの画像認識機能向上を目指した長年にわたる数学的研究と試行錯誤があった。
自分たちの研究について考える際には「製品内で使われるようになる研究なのかどうか」が基準となっていると語るのは、グーグルで複数の研究プロジェクトのリーダーを務めているジョン・ジャナンドレアだ。
それに時にはグーグルXのプロジェクトがコアビジネスに取り入れられることもあるし、そうなれば直接的な利益をもたらす可能性も出てくる。
かつて「グーグル・ブレーン」と呼ばれていた神経ネットワークのプロジェクトがいい例だ。これはいわゆる機械学習の研究プロジェクトで、アルゴリズムを使ってコンピュータにテキストや話し言葉の理解の方法を教えるというものだった。
「グーグル・ブレーンは、グーグルXにかかったあらゆるコストに相当するような価値を生み出していると言っても過言ではないかもしれない」とテラーは言う。
新たな発明が必ずしも未来の成功を保証するわけではないという点では、グーグルもほかの企業と同じだ。技術革新を起こした企業と、それをうまく商品化する企業が同じとは限らない。