【産業天気図・家電】デジタル家電減速で明暗、05年度は正念場で『曇り』
2005年度は、家電・AVメーカーにとって「我慢の年」になる。昨年のアテネ五輪のような大型イベントがないうえ、「三種の神器」の神通力がかすんでいる。デジタルカメラは国内需要が飽和状態で失速。DVDレコーダーは乱売合戦で、儲かるどころかソニー、パイオニアのように大赤字となって逆に業績の足を引っ張るケースも出てきた。残った薄型テレビもメーカー同士の競争に加え、液晶テレビとプラズマテレビの競争もあり、供給能力だけは増えるので価格下落に拍車がかかる。
そんな中で比較的安定感がある一番手は、液晶テレビと携帯などモバイル機器向けの中小型液晶パネルを持つシャープ。液晶テレビで高シェアを維持し続けている一方で、パネルから一貫生産する強みを最大限に生かし、05年度も増益を確保する勢い。また、プラズマを薄型テレビの主力にする松下電器産業も比較優位組。半導体や携帯など低迷部門もあるが、白物家電が底堅い収益力を持っているうえ、今年度実施した人員削減が営業利益を押し上げる。
一方、ソニーは05年度も厳しい。前半は強力な商品も見当たらない。利益を伸ばしてきたデジカメは国内シェアが大きく低下、携帯オーディオも「iPod」などの新興勢力に押されている。会長、社長以下の経営陣刷新で巻き返しを期するが、課題山積だ。三洋電機も苦戦必至組。OEM供給先の販売不振で稼ぎ頭だったデジカメが急減速、昨年10月の新潟県中越地震による半導体工場の被害で今年度は最終赤字に。05年度も半導体の収益が復元するには時間がかかる。
パイオニアはDVDレコーダーの乱売合戦のあおりを受け単価が急落、シェアダウンで在庫も積み上がった。在庫圧縮等は今年度内に決着をつけるとともに近くリストラ策を発表の予定。05年度が正念場の年になることは避けられない。
今夏以降、東芝とキヤノンがSEDと呼ばれるディスプレーを用いた薄型テレビを発売の予定。価格下落が消費者の購入意欲を刺激し、市場の量的拡大は望めるが、利益の分け前にあずかる企業は少なくなりそうだ。
【鶴見昌憲記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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