近鉄名阪特急に革命「アーバンライナー」の貢献度 「ひのとり」登場後もスマートな流線形で存在感

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かつては大和八木や津に停まらない「名阪ノンストップ特急」の運用があった。大阪線の高安列車区と名古屋線の富吉列車区の乗務員が担当。運転士の交代は、伊勢中川の連絡線で速度を落とし、カーテンを閉めた運転室で、ブレーキハンドルを持ちながら、運転士が車掌に、車掌が運転士にと、役割を入れ替えていたという。

2020年3月に新型特急車両「ひのとり」がデビューし、アーバンライナーは長く担当してきた毎時0分発の名阪特急から退くことになった。ひのとりも2クラス制で、プレミアム車両とレギュラー車両がある。全席に「バックシェル」を採用した。インパクトのある深い赤の外観は、車体カラーの候補をアーバンライナーに実際に塗ってみて検討した。

試験塗装をしたアーバンライナー(写真:近鉄)

ひのとり登場後は、名張、白子、近鉄四日市、桑名の各駅にも停車する毎時30分発の名阪特急をアーバンライナーが担うようになった。また、名古屋と宇治山田、鳥羽、賢島といった伊勢志摩方面を結ぶ特急でも運用する。2021年7月からは旧車販準備室の空きスペースが福山通運の名阪間の当日配送サービスに活用されている。

シートのデザインを変更中

アーバンライナーはいまもなお“進化”を遂げようとしている。2022年6月から7月にかけ、ネクスト編成でシート表布のリニューアルが完了した。2本目は7月27日に営業運転を開始したばかり。今後はプラスの各編成についても数年かけて順次展開していく予定だ。

デザインをリニューアルしたデラックスシート(記者撮影)

同社担当者は「ビジネスユースを中心とした名阪特急の『やすらぎ』の提供という基本コンセプトは踏襲しつつ、 汎用特急としての観光利用にも配慮し、お客様に意欲的・積極的な気分になっていただけるよう、さわやかで開放的なデザインになるよう心掛けた」と説明する。

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具体的には、デラックスシートは「現状のエンジ色とは大きく異なる濃い青をベースに、立体的に見える模様の効果なども活用しながら、高級感と華やかさを併せ持つデザイン」とし、レギュラー席は「汎用特急のグレー色のグループに入る調整をしながら、新規開発した円模様との組み合わせで明るさと楽しさを表現した」。 そのうえで「座り心地も改良した新しい表布のアーバンライナーをご利用いただき、よりアクティブな気分で移動をお楽しみいただければ」と力を込める。

洗練された流線形デザインで、名阪特急のブランド力向上と集客に大貢献したアーバンライナー。名阪特急のフラッグシップの役目をひのとりに引き継いだ後も、まだまだ特急ネットワークの中で存在感を示し続けることになりそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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