
結城真一郎(ゆうき・しんいちろう)/作家。1991年生まれ。2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、19年に同作でデビュー。21年に「#拡散希望」で第74回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。他の著作に『プロジェクト・インソムニア』『救国ゲーム』などがある。(撮影:梅谷秀司)
家庭教師のあっせん業者、マッチングアプリ、精子提供、リモート飲み会、ユーチューバー──。現代的な題材とガジェット(道具、装置)によって、以前にはありえなかった仕掛けが成立する。開成中学校・高等学校から東京大学法学部に進学、卒業後は会社員として働く兼業作家が、ミステリーの新たな可能性を追求した。
現代のガジェットを駆使
──5つの短編すべてに「今」を感じます。
個人的にですが、ミステリーというジャンルの難しさを実感しています。理由は大きく2つ。まず、科学技術の発展によって過去のトリックが陳腐化してしまった。犯人特定の方法が進歩して、昔なら逃げ切れた犯人が今では容易に特定される。さらに、トリックも動機も出尽くしてしまった感がある。新作が、先人たちのアイデアを焼き直しただけ、組み合わせを変えただけの小説になりがちです。
そうならないために何をするか。僕の結論は、この5〜10年で登場したガジェットを使うしかない、ということ。江戸川乱歩がどんなに偉大でも、ユーチューブを題材にした作品は書けませんから。
前作にもドローンなど新技術を登場させましたが、やはりどこか既視感があったようにも思う。一方、本書の5編については、現代的な題材をまず定め、それによって生まれる動機、あるいは成立するトリックを強く意識した。
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