刑事・警察ドラマが一変した意外と知らない契機 「踊る大捜査線」前後で激変、もう1つの作品も
前述の室井慎次(柳葉敏郎)の初登場時の官職は、警視庁刑事部・捜査一課・管理官。管理官とは、警視庁本部の役職で、主に重大事件の捜査本部を指揮・管理する重要なポスト(ちなみに、総勢400人超という警視庁・捜査一課の中で管理官は10数人だとか)。こうした警察内の役職を前面に出したのも『踊る大捜査線』が先駆け。これ以前は、ドラマ中で扱われることもまれでした。
それが現在では、ドラマ中で管理官、監察官などが登場してくるのはもちろん、『管理官・明石美和子』(テレビ朝日系/2018年)、『管理官キング』(テレビ朝日系/2022年)、『嫌われ監察官 音無一六』(テレビ東京系/2013年~)などなど、大々的にタイトルに冠するドラマも多く登場するまでになっています。
警察官は、国家公務員・総合職として年に30名前後採用される、いわゆる“キャリア”と、地方公務員である、いわゆる“ノンキャリア”と呼ばれる方々に分類されます。ノンキャリアは一部の例外を除いて巡査から階級が始まるのに対して、キャリアの初任階級は警部補。その後も無試験で昇級し、早ければ7年で(要するに20代中)、警視へ昇級するそうです。ノンキャリアは,一つ一つ昇級試験をパスしていかなければならず、警視になるのは早くて40代半ばというのですから、この差は激しいですよね。
そんな警察官のキャリアとノンキャリアの違いを明確に描いたのも『踊る大捜査線』が最初。刑事・警察ドラマに限らず、この言葉を広く浸透させる一役を担った点も大きいと思います。
『踊る大捜査線』は新たな構図を呈示した
前述の『太陽にほえろ!』は七曲署、『西部警察』は西部署、『踊る大捜査線』は湾岸署という、いずれも警視庁管内の架空の警察署が舞台。いわゆる“所轄署”です。
かつての刑事・警察ドラマは、こうしたショカツ署の刑事たちの活躍のみでほとんどの事件を解決へと導いていたワケですが、『踊る大捜査線』は、ショカツ署の活躍に加え、それに良くも悪くも対峙する本庁(警視庁本部。このドラマ中では“本店”)という、新たな構図を呈示したのが斬新でした。「ショカツは引っ込んでろ」などと本庁の警察官が恫喝したり、逆に「ショカツの意地、見せてやりましょう」なんて所轄署員たちのセリフなど、今では刑事・警察ドラマの定番となっていますよね。
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