「クソどうでもいい仕事」で悩む人に伝えたい盲点 自分が成長したから満足できなくなったのかも

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「ブルシット・ジョブ」という言葉がよく言われるようになっています。意味は「クソどうでもいい仕事」。アメリカの人類学者デヴィッド・グレーバー氏の『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』からきているようで、本では無意味な仕事の存在や社会的な有害性について、

①取り巻き:だれかを偉そうにみせたり、偉そうな気分を味わわせたりするためだけに存在している仕事
②脅し屋:雇用主のために他人を脅したり欺いたりする要素をもち、そのことに意味が感じられない仕事
③尻ぬぐい:組織の中の、存在してはならない欠陥を取り繕うためだけに存在している仕事
④書類穴埋め人:組織が実際にはやっていないことを、やっていると主張するために存在している仕事
⑤タスクマスター:他人に仕事を割り当てるためだけに存在し、ブルシット・ジョブをつくりだす仕事

の5つに分類しています。こういった無駄な仕事に対してかかる時間や人件費を解消していけば、企業の継続や業績の向上にもつながるというものです。

ただ、この言葉が流行したのは、会社や社会を変えていきたいという大きな話ではなく、もっと身近なことへの小さな不満からだと思います。該当する部分が多そうなのは、「書類穴埋め人」と「タスクマスター」でしょうか。誰も真剣に読まない書類を延々と作らされてうんざりしたり、そういった仕事を割り振るだけの、どうでもいい仕事を作り出す中間管理職にイラッとしたりしているかもしれません。

もし本当に今の会社にどうでもいい仕事しかなくて、改善も難しいなら、個人が組織を変えるのは難しいし、転職を考えるのも1つの道です。ただ、やりたい仕事もあって、自分や一部の人だけがどうでもいい仕事をさせられていると感じるなら、それは自分にも問題があると思います。

不満を言っても、誰も状況を変えてくれない

ブルシット・ジョブに不満があるとして、それを改善するための行動をしている人がどれくらいいるでしょうか。不満を言っていれば誰かが状況を変えてくれるということはまずありませんし、努力の方向がズレていても結果につながりません。

また、「どうでもいい」と感じた仕事は本当にどうでもいい仕事でしょうか。自分ではどうでもいいと感じても、実際にはそうではない場合があります。会社だって無駄な人件費を払いたくはありません。必要な仕事だと感じるから対価を払っているはずです。

どうでもよく感じたのが、はじめからではないなら、それは以前より自分の能力が上がって、今までの仕事では満足できなくなったという可能性もあります。人ってうまくできないうちは「すごいこと」をやっているように感じるけれど、熟練して簡単にできるようになると「誰にでもできる」と感じてしまうものです。

「クソどうでもいい仕事だ」と不満を感じたら、職場環境や自分の仕事のスタイルを見直してみてください。新しいことにチャレンジする転機かもしれないし、自分次第で変えていける部分もたくさんあると思います。

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