「気になる終点」狩留家駅、降りてみたら何がある? 中国地方ローカル線の旅で見た"赤字線"の実情
案内所でもらった地図に三江線の跡を見つけた。
きれいに整備された尾関山駅に着く。ホームや線路も残っており、今にも列車がやってきそうだ。線路に沿って自転車を漕ぐ。堅牢な高架線が頭上に見える。これだけの設備が放置された姿は寂しい。
実際、三江線が廃止を取り沙汰される前に何度か早朝の始発列車に乗ったが、ずっと私1人であり、20km強を過ぎた口羽という駅からようやく高校生が乗ってきたことが記憶に残っている。
翌朝は6時55分発の備後落合行きに乗車。客は地元の高校生たち。備後三日市でほとんどが降りていった。徐々に山間に入っていく。初夏の緑が目に眩しい。8時16分、備後落合に到着。以前は鉄道の要衝であったが、無人駅である。次は9時20分発の木次行きだ。
すがすがしい森林に囲まれた小鳥原川沿いを散策。駅に戻ると、元国鉄機関士の永橋則夫さんが、備後落合駅の説明をしていた。かつて100人以上が働いていたという駅舎には昔からの歴史を伝える写真が飾られており、ひとつひとつ解説してくれた。併設の倉庫には鉄道のジオラマがあり、地場の版元による書籍を購入できた。
地元の人も知らない列車の時刻
先に述べたとおり、芸備線の東城―備後落合間は、JR西日本で突出して営業成績が悪い。今年4月の発表では、2018~2020年平均で当該区間の営業係数(100円稼ぐために必要な費用、管理費は別)は2万6906。ほかにも赤字路線は多いが、営業係数が5桁の路線はここしかない。
永橋さん自身、この区間はおそらく持たないだろうという諦観があるようで「私の目の黒いうちは見届け続けたい」と話していたのが忘れられない。
実際、新見始発で東城を通る備後落合までの直通列車は、5時17分、13時2分、18時25分の1日3本であり、その後の連絡もいいとは言えず不便極まりない。
何度となく新見を5時台に出る列車に乗ったが空気を運んでいた。客がいても東城で降りる。一度だけ、小奴可(おぬか)という駅から婆さんが乗ってきたくらいだ。この列車は備後落合から新見へと折り返す際に通学の高校生を乗せるための、回送列車の役割なのだと思った。
以前、東城の旅館に泊まったこともあるが「明日は5時半に出ます」と宿主に告げたところ「そんな時間に列車があるのですか」と驚かれた。
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