「不登校専門オンライン教室」が力注ぐ「自己肯定感向上」4つのポイント 個別に寄り添い「好きの探究」で自走を目指す
辻田氏は同社で事業計画を練る中、複数の不登校に苦しむ家庭と話す機会を得て、予想以上に外出できない子どもたちが多く、総じて自己肯定感も低いことを知った。彼らは何らかの理由で学校に合わないことに悩み、それが自己肯定感を下げているのではないか――そうした仮説の下、社会起業家として不登校児童生徒の支援に取り組み始めたのである。
「最初はリアルな教室をつくろうとしていましたが、文科省の調査によるとフリースクールなどの民間施設に通えている不登校の子はわずか3%と、そもそも外出が難しくなっている子どもたちは教室に来ることができません。そこで、オンラインでマンツーマンの形であれば、ハードルが下がるのではと思いました。そのうえで、子どもたちが話したいことや好きなことを学べるような場であれば、やってみようと思うのではないかと考えたのです」
個人のペースや特性に合わせてマンツーマンで伴走
こうして“好き”の探究から「自己肯定感」を育てていく「夢中教室WOW!」が生まれた。子どもたちの発達特性や繊細な気質を考慮している点も特徴の1つで、「受講スタイルやペースを合わせることを大切にしています」と、辻田氏は言う。
例えば、授業は1コマ60分だが、土日も含め毎日朝9時半から20時半まで7コマ用意し、受講者がその中から参加しやすい時間を選べるようにしている。授業料は1コマ3500円、週に1回のコースと月に2回のコースがあるが、前者を選択する受講者が6~7割を占める。
そしてこのサポートの肝となるのが、伴走者となる講師だ。現在、講師陣は14名。副業として携わっている人が多く、元学校教員や会社員など、さまざまなバックグラウンドの人材で構成されている。
「主に私たちが伴走しているのは、エネルギーは充電されつつあるけれど、外に出るのはハードルが高い子。彼らは『居場所がない』と感じており、マズローの欲求5段階説でいうところの社会的欲求や安全欲求を満たされていない場合が多いのではと思います。次の段階の承認(尊厳)欲求や自己実現欲求がないと能動的に勉強に取り組むことはできません。だから私たちは、安心して何でも話せる『第三者』と共に好きなことに取り組める環境を大切にしているのです」
そのため講師には、子どもを否定せず傾聴し、寄り添って自己肯定感を温めていくマインドセットが必要だという。さらに、対話から興味関心を引き出し、好奇心を持って子どもたちと一緒に学び、探究を楽しめるスキルも併せ持った人かどうかを重視して採用している。新人講師には、1on1のロールプレイング授業を行うほか、子どもの成長フェーズに合わせた声がけなどのノウハウを共有するといったフォローに努めているという。
「何らかの発達特性を持ったお子さんも少なくないのですが、それを理解してもらえず傷ついてきた子は多いので、私たちだけは絶対否定しないようにしたい。だから、基本的には注意せず待つ姿勢を取り、日頃から講師陣で実践や対応のノウハウを共有したり、勉強会を行ったりして、子ども1人ひとりに寄り添える体制にしています」
探究を深めていく子や活動の幅が広がる子も
授業は、まず子どもたちの興味や関心がどこにあるのか、マインドマップを使いながらヒアリングしてテーマを決め、そのことについて講師が一緒に調べたり深めたりする探究学習のような形で進めていく。
そして、テーマに関する話を聞きたいのか、自分でどんどん調べたいのか、子どもの要望に応じて、やり方や内容を変えていくという。例えば、恐竜が好きな子であれば、「今週はティラノサウルス、来週はスピノサウルスについて調べようか」など、子どもと講師が一緒に対話しながら“フルオーダーメイド”で活動内容を決めていく。


















