広島「不登校支援センター」、オンラインの探究学習やクラブ活動が好評 校内フリースクールに限定せず学習支援を拡大

毎年「スペシャルサポートルーム(SSR)」を増設
「スペシャルサポートルーム(以下、SSR)の利用者からは、『少人数で安心できる場所があると学校に来ることができる』『自分のペースで学習ができる』『SSRのおかげで高校進学ができた』などの声が届いています」と、広島県教育委員会の不登校支援センター長を務める蓮浦顕達氏は話す。

広島県教育委員会事務局学びの変革推進部 個別最適な学び担当 不登校支援センター長
1993年4月に広島県公立学校教諭として採用され、県内小学校に13年間勤務。広島県教育委員会事務局指導主事などを経験し、2021年度から現職
SSRは、不登校児童生徒を対象にした校内フリースクールだ。個々に応じて学びを支援し、不登校の未然防止と将来の社会的自立につなげていくことを目指している。
「本県は2014年から『すべての児童生徒の主体的な学びの実現』に取り組んできましたが、その中で主体的に学ぶことが難しい児童生徒は、自己肯定感が低かったり、楽しく学んだ経験が少なかったりすることがわかってきました。そこで、一斉授業だけでなく、個々の実態に応じた『多様な選択肢』と『自己決定』を意識した教育活動を行う必要があると考え、19年度に『個別最適な学び担当』を新設してSSRに取り組み始めたのです」
同県教育長の平川理恵氏が横浜市立中学校の校長時代につくった校内フリースクールを参考に、19年度に県内の計11校(5小学校、6中学校)を推進校に指定し、空き教室などを利用して設置をスタート。その結果、県全体の不登校児童生徒が増加する中で、20年度にSSR推進校の9校で不登校児童生徒数が前年度以下になったという。
21年度には支援を強化するため13名の人員を配置して不登校支援センターを新設し、SSR推進校を計21校(6小学校、14中学校、1義務教育学校)に拡大。利用者は9月末時点で183名に上った。22年度はさらに小学校で1校、中学校で11校増やし、計33校体制で展開している。
「相談する力」と「メタ認知」の育成を目指す
SSRは、通常学級への復帰は前提としていない。安心安全な場所であるととともに、「生きる力」を育む成長の場を目指しており、とくに「相談する力」と、自分の強みを知って生かす「メタ認知」の育成に重点を置くのが特徴だ。
そのため、まず環境整備に力を入れている。例えば、ソファやカラフルないす、テーブルクロスなどを用いて「学校らしく見えない」空間づくりを心がける。不登校児童生徒は、学校に対してネガティブなイメージを持っている子が多いからだ。
外の階段を上がってすぐ入れる部屋や玄関を通らなくて済む部屋など、周囲の視線を気にすることなく入室できる場所をSSRにする配慮も行う。また、学ぶ場所も自己決定ができるよう、パーティションやラウンドテーブルなどを活用して個別学習と協働学習が両立できるレイアウトを工夫している。

しかし、予算はない。初年度にSSR推進校となった11校のみ、教室整備などのために40万円が県から配分されたが、2年目以降はそれまでのノウハウを基に全推進校が県からの予算措置はゼロで環境づくりを行っている。学校にある物品を有効活用したり、地域や企業から家具の提供を受けたりするなど、各校で工夫を凝らしているという。