熊本市「不登校生のオンライン学習支援」の中身 来年度実施に向け9月から学習体験スタート

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2020年のコロナ禍による一斉休校時、市内すべての小中学校(計135校)でオンライン授業を迅速に実施して注目された熊本県熊本市。22年度からは、学校への登校が難しい児童生徒を対象とした「教育ICTを活用したオンライン学習支援」を開始する。その本格実施に向け、希望者を募ってこの9月から学習体験をスタートした。具体的にどのような体制で支援していくのか、主導する同市教育委員会に取材した。

熊本県熊本市が2022年度から本格実施を予定している、不登校生を対象とした「教育ICTを活用したオンライン学習支援」。この支援を主導する同市教育委員会総合支援課課長の川上敬士氏は、こう話す。

「オンラインは自分に合ったペースで学べるメリットがあります。また、登校が難しい子にとっては、たとえ完全登校ができなくても、学校とつながるだけでも何か違ってくることがあるかもしれません」

そう考えるのは、これまでの同市の背景が関係している。同市は、新学習指導要領の実施を見据えて、17年度から教育のICT化に本腰を入れ始めた。18年度から市内の小中学校に段階的にタブレット端末を配備し、20年4月にはすべての学校で「教員1人1台、児童生徒3人に1台」を実現。こうした端末環境も奏功し、コロナ禍の一斉休校時も、4月半ばには市内すべての小中学校でオンライン授業を始めることができた。

一斉休校時のオンライン授業で起きた変化とは?

その一斉休校時に、「不登校生がオンライン授業に参加できた」という声が学校現場から複数聞こえてきたという。ある中学校では、オンラインで参加できた不登校生に対して、学校再開後も各教科担当の教員たちが日替わりで毎日1時間、オンラインで個別に学習支援を行った。すると、その生徒は放課後に学校に顔を出すようになり、3学期からは登校できるようになったという。川上氏は、次のように話す。

「生徒は小学校高学年からずっと不登校でしたが、今では無欠席。もともと生徒は勉強に熱心に取り組むタイプで、学校に行けなくなってからも『学校に行きたいし勉強もしたかった』そうです。現在、市内にはさまざまな理由で学校に行けない子が1500人ほどいますが、そのうちの何割かは『行きたくても行けない』状態なのかもしれないし、オンラインなら学校とつながれる子も一定数いるのではと思い始めました」

17年の教育機会確保法の施行を受け、文部科学省が19年に通知した「不登校児童生徒への支援の在り方について」では、登校という結果だけを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉え、社会的な自立を目指すことが必要だとしている。そのうえで学校が彼らを支援するに当たって活用できるものとして、ICTを活用した学習支援も挙げられている。

こうした流れの中、前述のとおり同市は17年と早い段階からICT教育に力を入れ始めていた。不登校生へのオンライン学習支援も一部の学校が行うようになっていたが、21年2月には全小中学校で1人1台端末が整備できたことで、以前よりも格段に取り組みやすい環境になった。とはいえ、「学校は多忙ですから、現場で取り組みを広げることは難しいと思いました」と、川上氏は言う。

学習体験に小学校と中学校を合わせて計68名が応募

そこで、同市教育委員会が主導でサポート体制を組むことに。小規模校の本荘小学校と芳野中学校を「オンライン学習支援校」とし、同小学校に2名、同中学校に1名の新たな担当教員を採用して配置した。

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