広島「不登校支援センター」、オンラインの探究学習やクラブ活動が好評 校内フリースクールに限定せず学習支援を拡大
不登校支援センターが2つのクラブを発足させ、2カ月後にやってみたいクラブを検討する「企画部」も立ち上げたところ、新たに「写真部」が誕生。クラブの集大成として開催したオンラインフェスも好評だった。
今後、オンライン学びプログラムとオンラインクラブ活動は、SSR設置校以外の学校や教育支援センター、フリースクールなどに通う児童生徒にも拡大していくという。
不登校支援センターは、居場所の選択肢として、学校外の学びの場も提供している。例えば、初年度から続く「東大LEARN in 広島」(旧・東大ROCKET in 広島)。不登校の児童生徒などを対象に、東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授の研究室と県教育委員会が協力し、活動から学ぶ体験型のプログラムを展開している。21年度は、「ジャム好きな子集まれ!君は新しい味を作ることができるか?」などユニークなテーマで4つのプログラムを実施した。
新たなオンライン学習支援「SCHOOL“S”」始動
手応えのある1年だったが、蓮浦氏が感じている課題は3つある。1つ目は生徒一人ひとりに応じたサポート計画の作成の難しさだ。
「サポート計画を立てる際に用いる FDPは本来、学校教育よりも広い分野で使われるアセスメント指標。先生方からは短期目標をどう設定したらいいのか迷いがあるという意見も出ており、アセスメント指標はバージョンアップを図る必要があります」
2つ目は、SSRの理念である個別最適な学びの取り組みを、いかに通常教室へ波及させるかだ。それにはSSRの担当教員だけではなく、SSR設置校の全教員、SSRを利用しない児童生徒・保護者の理解を促進することが欠かせない。
「私自身も小学校の教員時代は知識や理解が足りなかったのですが、中にはSSRを『逃げている』と捉える方もいるので、そうではないことを周知していくことが大切になります。とくに先生方には、SSRの支援の考え方を通常の学級の授業改善や学級運営に生かしてほしい。それが不登校の未然防止につながると思うのです。不登校支援センターの指導主事は週に1回、学校を訪問してSSR運営や学校組織体制の構築を支援していますが、今後はより理念や趣旨の周知を強化していきます」
3つ目は自宅からなかなか出られない児童生徒へのアプローチだ。21年度にオンラインの活用が一定の成果を得たこともあり、22年度は県の教育支援センター(旧・適応指導教室)において、来室とオンラインを組み合わせた学習支援も開始する。
これは東大LEARNの中邑教授を“名誉校長”とする「SCHOOL“S”(スクールエス)」という取り組みで、主に県内全域の小中学生を対象とする。大学などの専門機関やNPO法人とも連携し、児童生徒の個々の状況に応じた学びを進めて社会的自立に向けた支援を行っていく考えだ。
同県は不登校支援センターを核に独自の支援体制を構築しつつあるが、個別最適な学びが推進される今、その理念や1つひとつの取り組みはほかの自治体でも応用できるのではないか。とくに外部リソースやオンラインの活用による創意工夫は、積極的に取り入れたい視点だ。
(文:田中弘美、写真:広島県教育委員会提供)
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東洋経済education × ICT編集部
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