広島「不登校支援センター」、オンラインの探究学習やクラブ活動が好評 校内フリースクールに限定せず学習支援を拡大
もう1つ、環境整備としては、児童生徒がいつでも相談できるよう、伴走者となる担当教員を県が各校に1名加配している。
「温かく迎えてくれる人が必ずSSRにいることで、安心感が醸成されます。また、子どもたちの現状を把握する手法の1つとしてFive Different Positions(FDP)※というアセスメント指標を取り入れていますが、担当教員はその評価を踏まえて子どもたちが今の状況に至った要因を探り、生きる力の向上につながる長・短期の目標を設定して、個別サポート計画を作成しています」
※ 佐賀県のNPO法人スチューデント・サポート・フェイスが使用している指標
そのうえで、担当教員は児童生徒・保護者と共通理解を図り、振り返りと声がけを大切にしながら、個別学習と集団学習の両面から支援を行う。
個別学習では、児童生徒が時間割と学習する場所(SSRあるいは通常教室)を自由に決めるが、変更はいつでも可能で、迷ったり悩んだりしたら担当教員が相談に乗る。

集団学習では、興味・関心を生かした調べ学習を行うほか、児童生徒が相互に教え合う活動や、関わり合いや協力が必要となる体験活動などを取り入れ、認め合うことができる人間関係の構築を試みている。校内フリースクールの設置を検討している自治体や学校に、蓮浦氏はこう助言する。
「大人側が子どもたちに歩調を合わせ、子どもたちが感じる壁を限りなく低くすることが大事です。また、本県は推進校を指定する形でSSRを運営していますが、理念や大枠の方向性を示しながらも各学校が柔軟に取り組むことを大切にしています。学校や子どもの実態に合わせることも重要ではないかと思います」
「オンライン学びプログラム」「オンラインクラブ活動」とは?
1人1台端末の環境を生かし、2021年7月からは21校のSSRをつなぐ新しい取り組みも始めた。任意で参加できる「オンライン学びプログラム」と「オンラインクラブ活動」だ。前者は、県の施設や民間企業などとコラボレーションした体験型の探究学習で、延べ582名が参加。後者はいわゆるサークル活動のような場で、延べ231名の参加があった。
例えばオンライン学びプログラムでは、21年9月に三次市の歴史民俗資料館と協働して、「イノリノカタチ」というテーマで3回にわたる講義を行い、オリジナルの勾玉(まがたま)作りを実施。当初の予定にはなかったが、参加者が作った勾玉を同資料館が展示してくれた。「みんな展示をとても喜び、家族で資料館へ出かけた子どももいるそうです。ほんの少しでも、外の世界に目を向けるきっかけになったのかなと思います」と、蓮浦氏は話す。
学校外との協働企画も多い。カルビーのオンライン工場見学やバレットグループのプログラミング教室といった企業との連携企画のほか、東京国立近代美術館の協力を得てアート鑑賞も開催した。
また、22年2月には、不登校生を対象とした「教育ICTを活用したオンライン学習支援」に取り組む熊本市教育委員会と合同で、「オンライン修学旅行」を実施。1回目は宮島、2回目は熊本城から中継し、双方の子どもたちがオンライン上で旅行を楽しんだという。
「登校が遅かった子がプログラムの時間に合わせて登校するようになったり、講師を務めた子が自信をつけて学習にも積極的になったり、参加した児童生徒には成長が見られます」と、蓮浦氏は振り返る。
オンラインクラブ活動の1番人気は、「イラストクラブ」だ。専門の講師を招くほか、ドットアートが得意な生徒が講師として教える回もあったという。また、予想以上に人気となったのが「生き物クラブ」。爬虫類好きの県職員が講師となって、自宅から月替わりでヘビやトカゲなどと一緒に登場。子どもたちに大ウケしたそうだ。
