連勝なるか、ジョニー・デップが直面する次の裁判 撮影現場での暴行で訴えられたが勝ち目はある

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彼女によれば、ことの発端は、ホテルの外での撮影中、ブルックスがホームレスの黒人女性に対して人種差別的な発言をしたこと。近くのベンチに座っていたデップは、それを見るとすぐ立ち上がり、ブルックスに「なぜあんなことを言ったんだ?君は自分があの女性より上だと思っているのか?自分が誰だと思っている?いい加減にしろ」と言った。だが、暴力はなく、「10万ドルやるから」という言葉も出ていない。それを証明する写真もたくさんあるそうだ。

ダノフはまた「The Daily Beast」に対しても、「彼らの間でちょっとした諍いがあっただけ。暴力はありませんでした。その後1時間半ほど撮影をし、終わるとロケーション・マネジャーはジョニーのところにやってきて、ふたりはハグしていました。良い感じでしたよ」と語っている。「The Daily Beast」は、ほかにも3人の現場クルーに話を聞いたが、全員がダノフと同じことを言ったという。

とあれば、今回もデップに勝ち目はある。逆にブルックスは、自分が本当に裁判で闘うことになるとは踏んでいなかったのではないだろうか。裁判という面倒を避けるためにデップが示談をオファーしてくることを、彼は密かに期待していたのではないかと思われるのだ。あるいは、ブルックスのほうからいくらかの金額を提案して、これで示談にしないかと持ちかけていたこともありえる。

示談で解決せず白黒はっきりつける

普通は裁判の前にできるだけ示談で解決したがるものなので、それは十分考えられること。しかし、ハードとの裁判同様、デップは、時間とお金がかかっても、身の潔白を世間にはっきり証明することを選んだのではないか。

残念ながら、今回は、これらの人々が証言する様子をライブで見ることはできない。YouTubeチャンネル「Law & Crime」がテレビカメラを持ち込みたいと申請したのだが、判事によって却下されてしまったのだ。

ハードとの裁判では、セレブリティーふたりの争いとあって世間の関心が非常に高いことから、裁判所周辺の混乱を避けるためにも、判事はライブ中継を許すことを選んだ。おかげで世の中の人々は、自分の目で証拠を見て、自分の耳で証言を聞き、自分で判断することができた。

それに慣れてしまった後だけに、この裁判はややもどかしく、物足りないものになるだろう。それでも、デップが2連勝するかどうかどうかを、遠くから多くの人がきっと見守るはずだ。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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