ECBの緊急会合、欧州の定番的な危機再燃への焦り 落ち着きのないラガルド流コミュニケーション

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今回の緊急政策理事会もイタリアに象徴される南欧諸国の利回りが顕著に上がっていることに対応する動きである。声明文では具体策は明らかになっていないが、①パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)で購入した国債の満期償還に際し再投資は柔軟に行うこと、②市場分断化を抑止するための新しい枠組み(a new anti-fragmentation instrument)の設計作業を関連部署へ指示したこと、が表明されている。

当面は、①において再投資資金の多くを南欧諸国へ配分するという措置が想定される。

図のように4月下旬以降、イタリアやギリシャの対ドイツスプレッドは高止まりし、特にこの1週間では顕著に拡大していた。特にECBの念頭にあるのはイタリア国債への対応だろう。6月9日の政策理事会後、イタリア10年国債利回りはまだ欧州債務危機が完全終息を見ていなかった2013年末以来の4%台に乗せている。

2023年総選挙を控えイタリアが焦点に

イタリアに関しては2023年前半の総選挙と、これに付随するポピュリスト政権誕生への懸念が少しずつ大きくなりつつある。類似の話はやはり来年に総選挙が予定されているスペインにも浮上している。

もちろん、今のユーロ圏には復興基金があり、ECBもPEPPで大量購入した国債の保有継続というサポートを試みるが、予告済みの来月以降の大幅利上げに合わせて国債利回りの水準が上がることはある程度避けようがない。フランスなどセミコア国の利回りは落ち着いていることを踏まえれば、「非南欧諸国の国債償還金を南欧諸国へ柔軟に配分する」という措置が想定される。

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