約2割の小中学校で教員不足の可能性、「社会人採用」は切り札にならない訳 学級担任決まらない、一部の授業できない例も

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ここでも、過酷すぎる学校の労働環境の問題なども関連してくるが、学生にとって何が障壁になっているのか、何か対策が打てる余地はないのかなどを、もっと診断し、早急に動いていくことが、国と自治体には必要だ。

国、自治体、学校がすぐ動くべきこと

各地の教育委員会と学校の役割として、やはり、長時間労働の是正は一丁目一番地であろう。ましてや、勤務時間の改ざん、過少申告などが起こり、くさい問題にふたをするような姿勢や問題の先送りは、学生・若者、社会人などにどう見えるだろうか。

教員不足が発生しているくらい、各学校は苦しい状況であることは承知しているが、「文科省が悪い、財務省が予算をつけてくれないから悪い」などと他人のせいばかりにして、自分たちの職場を改善しようとしないようでは、優秀な人材ほどそっぽを向くだろう。

国の役割としては、こうした学校などの取り組みを、せめて邪魔しないでいただきたい。つまり、現場の仕事を増やすな、と申し上げたい(学習指導要領や新型コロナウイルス対応をはじめ学校の業務は増え続けている)。

また、もっと学生向けに教職を目指すメリット、インセンティブをつけることが必要ではないだろうか。一案として、私たちの「#教員不足をなくそう緊急アクション」では、教職に就いた場合(あるいは一定年数勤務した場合)の奨学金返済免除を日本学生支援機構に提案している。これは日本育英会のときに1997年度まであった制度だ。

返済不要の奨学金を設けることは、教員集団の多様性を高めることにも資する可能性がある。昨今、家庭の社会経済的環境によって学力や進路に差が出る「教育格差」の是正は、日本社会の大きな課題の1つである。教員にもさまざまなバックグラウンドを持った人がいるほうが、児童生徒の理解や支援によい影響があると思う。

そして、何より、こうした施策を国が打つことは、学校の先生を大事に思っているというメッセージになる(教員以外のスタッフへの支援も重要なことは申し添えたいが)。現役の教員にも、学生などに対しても応援するメッセージとなろう。

戦争に例えるのは不適切かもしれないが、学校現場は、戦場のごとく、高いストレスを抱えつつ、予測困難な問題、大小さまざまなトラブルへの対処に追われている。教員不足を放置する国・自治体の姿勢は、十分な補給も援軍も送らず、「とにかく踏ん張れ」と精神論を言っているだけのようなものだ。そして、犠牲になるのは、いつも子どもたちだ。早くこの愚かさと深刻さに多くの人が気づいてほしい。

(注記のない写真: EKAKI / PIXTA)

執筆:妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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