「保護者に言えない」が阻む、学校の働き方改革 広がりすぎた学校、教師のサービス減らすには

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
新学習指導要領への対応や「1人1台端末」の整備・活用、さらにはコロナ対策など、学校の先生の仕事は増える一方で、現場からは悲鳴の声が上がっている。そうした中、これまで学校や教員が行ってきた業務を、地域などに移行していこうという動きがある。「今変わらなくて、いつ変わる? 学校教育最前線」をテーマに、教育研究家の妹尾昌俊氏に解説いただく本連載。今回は、学校の働き方改革の現状と問題点、一歩でも前に進める方法について語ってもらった。

働き方改革が、前進しているところもあるが…

先日、文部科学省が「教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査」の最新結果を公表した。昨年9月時点での各教育委員会の取り組み状況が概観できる。参考事例も紹介されており、都道府県別のデータもあるので、関心のある方はぜひチェックしてほしい。

さて、直近の状況をどう読むか。まず、勤務時間(在校等時間)の把握について見ると、ICカードやタイムカード等の記録による客観的な方法で把握している割合は、都道府県100%(前年度91.5%)、政令市100%(前年度85.0%)、市区町村85.9%(前年度71.3%)である。

タイムカード等は教育現場でも、やっと当たり前になった。平成28年度調査では、タイムカード等で把握していた自治体は、都道府県の10.6%、政令市の20.0%、市区町村の5.9%しかなかったことを思うと、ずいぶん様変わりした。

「勤務時間外における保護者や外部からの問い合わせ等に備えた留守番電話の設置やメールによる連絡対応の体制を整備している」という自治体も、直近では都道府県78.7%、政令市95.0%、市区町村48.8%である。令和元年度調査では、都道府県44.7%、政令市55.0%、市区町村24.9%だったから、ここ3年でおよそ倍増した。

おそらく多くの教育関係者の反応としては、5、6年前までは、「留守番電話なんて学校に設置していいの? できるの?」というものだったと思う。隔世の感があると言うと少し言いすぎかもしれないが、前進している。

妹尾昌俊(せのお・まさとし)
教育研究家、合同会社ライフ&ワーク代表
徳島県出身。野村総合研究所を経て、2016年に独立。全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱のほか、埼玉県、横浜市、高知県等)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁、文化庁において、部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議の委員も務めた。Yahoo!ニュースオーサー、教育新聞特任解説委員、NPOまちと学校のみらい理事。主な著書に『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』(PHP新書)、『教師崩壊』(PHP新書)、『こうすれば、学校は変わる! 「忙しいのは当たり前」への挑戦』(教育開発研究所)、『学校をおもしろくする思考法 卓越した企業の失敗と成功に学ぶ』『変わる学校、変わらない学校』(ともに学事出版)など多数。5人の子育て中
(写真は本人提供)

一方で、こうした取り組みは、働き方改革なり業務改善のスタート地点付近にすぎない、ともいえる。ICカードやタイムカードによるモニタリングは、ダイエットしたい人が体重計に乗っているようなもので、それだけでやせられるわけではない。しかも、過少申告が起きている学校もあるから、体重計が狂ってしまっている(前回記事「学校のブラック化招く、教員「隠れ残業」の問題点」)。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事