スカイマーク西久保氏は、どこで間違えたか

航空業界に挑んだIT経営者、万策尽きる

一方で、スカイマーク社長としての西久保氏には、つねに批判やトラブルがついて回った。西久保氏はスカイマーク社内で、生産性の向上やコスト削減などを目的に、成果主義を徹底させた。IT業界の常識を航空業界に持ち込んだが、古い体質ゆえの抵抗もあった。

不満を持った整備士が大量に退職。整備トラブルも続出したが、意に介さず。2006年4月には衆議院国土交通委員会・参考人質疑に呼ばれ、公明党・斉藤鉄夫議員から「離職者防止の対策を打っているのか」と聞かれたが、「辞めた整備士は優秀だったかといえば個人差があった」「人が辞めることに対し強く臨めるかどうかが航空ベンチャーの分岐点。方向性を変えるつもりはまったくない」などと返答し、波紋を呼んだ。

2008年には機長の相次ぐ退職が原因となる大量欠航も招いた。就航から程なくでも、不採算と見るや、その路線からあっさりと撤退していく経営姿勢を「公共性に欠ける」と非難する声も少なくない。

ひたすらに求め続けた効率化

それでも、ひたすら「効率」を追い求めていった。制服を原則廃止し、ポロシャツに統一したのも西久保流。「制服に着替えるのには更衣室もいるし、その時間にもコストがかかる」。地上職、客室乗務員、機内清掃など一人で何役もこなせるようにした。ほぼ全員を正社員化して社内異動を頻繁にして、欠員が生じにくい体制も整えた。

これらと並んで肝になったのが機材の統一だ。スカイマークはボーイングの中型機「767」(265席程度)を併用していたが、2009年10月に「737」(全席エコノミーで177席)への統一を完了。パイロット訓練や整備などの負担、関連費用の軽減とともに、機材の小型化で搭乗率も高まった。

一連の改革によって、勝利の方程式はいったん完成を迎える。万年赤字だったスカイマークは、高収益企業に変貌。2011年3月期~2012年3月期は2年連続で100億円を超える営業利益をたたき出し、営業利益率はそれぞれ約2割に迫った。

そこから、さらなる大勝負を打つ。それがA380導入による国際線進出計画だった。2010年11月にエアバスと基本合意。2011年2月には購入契約を締結した。A380はファースト、ビジネス、エコノミーの3クラス構成の標準仕様で525席を配備できる。対して西久保はビジネス116、広めのプレミアムエコノミー280の計396席として、エコノミーはいっさい設けないプランを編み出した。

当初想定していた運賃は、成田─ニューヨーク線のビジネスで往復40万円弱、プレミアムエコノミーは同20万~25万円。大手の半額程度にとどめながらも、専有面積と運賃の相関から、低採算のエコノミーを排除することで差別化するとともに、利潤を得る戦略だった。

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