中古価格が7倍以上に高騰、空冷ポルシェ人気の訳 4000万円以上の値段もつく、その理由を探る

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一方、3代目の964型は、パワーステアリングやエアバッグ、エアコンなどが付いており、運転のしやすさや安全性、快適性も優れることで人気が高く、若い世代にも購入者がいるという。とくに今回4600万円の価格がついていた911カレラRSは、最近引き合いも多く、稀少性も高いことで高値となったようだ。担当者によれば、「15~20年前の中古車価格は600万円程度だった」というから、現在は7倍以上に中古車価格が高騰していることがわかる。

旧車好きを惹きつける空冷ポルシェ911の魅力

初代901型にあたる、1973年式の911T(筆者撮影)
初代901型にあたる、1973年式の911T(筆者撮影)

ウインズオートの担当者によれば、空冷ポルシェ人気は、964型を筆頭に、全体的に高まっており、中古車価格も上昇傾向。ここ数年は「ブーム」と呼べるほどの過熱ぶりだという。

911Tのリアビュー。価格は1750万円(筆者撮影)
911Tのリアビュー。価格は1750万円(筆者撮影)

近年は、国産スポーツカーの旧車が人気で、中古車価格が高騰していることがよく話題に上がる。例えば、日産「スカイラインGT-R」は、1969年の初代モデルや1989年発売の3代目などは1000万円を優に超える価格で取引されているという。また、トヨタが1967年に発売した「2000GT」に至っては、世界的にビンテージカーとしての地位を確立しており、海外のオークションなどでは1億円を超える価格がついた車体もある。だが、ウインズオートの話を聞くと、国産旧車ばかりではなく、ポルシェのクラシックカーも近年は愛好家からより熱い視線を集めているようだ。

ちなみに旧車の買取サービス「旧車王」を運営する「カレント自動車」が実施した旧車のユーザー人気ランキングでも、911は第1位のスカイラインGT-Rに次いで第2位となっている。当ランキングは、旧車に興味のある男女129名に対して行ったアンケート調査の結果をまとめたものだ。アンケートは2022年4月1日~2022年4月12日の期間に実施し、「2010年式以前のクルマ」を旧車と定義して調査している。なお、そのほかにランクインしたモデルは、3位「トヨタ・ランドクルーザー」、4位「日産・スカイライン」、5位「ホンダ・NSX」など、911以外はすべて国産旧車が占めていた。

あくまで一例ではあるし、アンケート対象車種が2010年式以前であるため、911には水冷エンジンモデルも含まれている可能性はある。だが、近年人気が高い国産旧車の間に割って入り2位になっていることは、いかに911を支持する旧車愛好家が多いかがうかがい知れる。ポルシェ・911は、長い伝統を持つモデルだけに、日本でも幅広い層に支持を受けている証だといえるだろう。

平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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