軍事技術の流出めぐる北朝鮮との知られざる攻防 元スパイへ取材、暴露系情報小説の著者に聞く

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――対北朝鮮ではアメリカや韓国も複雑に絡んできます。

日本とアメリカは同盟国ではありますが、利害が対立する点もあります。例えばアメリカは在日米軍の駐留経費の増額に期待しています。そのため極東情勢の緊迫はアメリカにとって好都合という側面もあるでしょう。

北朝鮮の情報を得るにしても、アメリカは衛星から、韓国は脱北者などの人からが主な手段となります。それぞれ違うルートから得た情報をめぐってせめぎ合いが生じるわけです。

威嚇としての手段は選ばず

――北朝鮮からのミサイルへの防衛策として、迎撃ミサイル派と地下シェルター派の政治家が争うシーンがあります。

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北朝鮮のミサイル技術は高度化しているので、迎撃ミサイルで完全に防ぎきれるかは疑問です。地下シェルターは建造物の破壊は免れませんが、人命を守るには有効です。

ただ東京は地下鉄が縦横に張り巡らされているので、いざとなればシェルターの役割を果たすことができるかもしれません。

もっとも北朝鮮の大きな目的は、朝鮮半島の統一と金正恩体制の維持の2つです。侵略を企図して日本にミサイル攻撃してくることは考えにくく、発射実験を繰り返しているのも威嚇のためです。

「山下」のモデルの方も、過去に、満員電車に乗っている時にスーツの背中部分を切られたり、駅のホームで列の先頭で待っていると後方から背中を押されたりといった脅しを受けたことがあるようです。

――小説の中では個性あるさまざまな人物が躍動します。

海上保安庁は警察のように上意下達の指揮命令系統ではなく、現場主義が徹底しているようです。海上で何か大事が起きたときに上からの指示を待っている余裕がなく、現場が瞬時に判断しなければいけません。そうした雰囲気が伝わるように、映画やドラマなどのように場面が浮かんで、スピーディーに展開していくことを意識して書きました。

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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