「トップガン」トム・クルーズが抱く忘れたい過去 「トップガン マーヴェリック」で健在ぶり発揮

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それからまもなく、クルーズは、ブルック・シールズが産後うつに悩み、抗うつ剤を飲んだことを明かしたことを「無責任だ」と非難し、批判されることになった(余談だが、クルーズの映画デビュー作はシールズ主演の『エンドレス・ラブ』だ)。

サイエントロジーの信者であるクルーズは、すべての薬に反対なのだ。「ブルック・シールズは才能があるし好きだ」と言いつつ、クルーズが「でも彼女のキャリアは全然だめになっちゃったよね」と付け足したことも、さらなる反感を買った。

そして2020年には、『ミッション:インポッシブル7』の撮影現場で彼がクルーに怒鳴る様子の音声がリークされ、物議を醸す。ソーシャルディスタンスを守らずにコンピューターのモニターを見ているクルーに対して放ったその暴言で、クルーズは「俺たちはお手本なんだぞ!俺らがやっていることをハリウッドが信じたから、撮影が戻ったんだ」「俺は毎晩、俺たちがどうやっているのかを知りたがるスタジオや保険会社やプロデューサーと電話で話しているんだ!その人たちも映画を作れるように。俺らは雇用を生み出しているんだよ」「またやったらクビだからな」と、Fワードを連発している。

コロナのせいで映画の撮影が何度か中止になったこともあり、プロデューサーでもあるクルーズは、撮影現場の安全のため、神経だけでなく、自分のお金も使っていたようだ。そんな彼の気持ちを理解する人からは「リーダーはこれくらいはっきり言ったほうがいい」という支持の声が上がった一方、「部下にこんなふうに罵倒するなんて良いリーダーではない」という批判の声も出た。後にクルーズは、また撮影が中断されることになったらと思い、感情的になったのだと述べている。

『トップガン マーヴェリック』は純粋に楽しめる

だが、それももう昔話。『トップガン マーヴェリック』を楽しみにしている人は、そんなことをもう忘れているはずだ。批判されたことはあっても、クルーズが観客から嫌われたことはない。「観客を楽しませる」という使命を持ち続け、すばらしい娯楽作をたくさん送り出してきたクルーズは、揺るぎない世界のトップスターなのである。

「トムは優れたプロデューサー。僕よりも上だ。映画製作のすべての側面を知っていて、どの仕事でも、その分野の専門の人よりうまくやってみせる。彼は毎日現場で、このシーンをどうやればもっとすごいものにできるかと努力する。映画の中で全員を光らせてあげようともする。そのエネルギーはみんなに伝染する」と、ブラッカイマー。そうやって生まれたトム・クルーズの最新作を、人々はきっと温かく受け入れることだろう。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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