円安で「株が上がる業種」「下がる業種」はどれか 今後は株価の二極化が進行する可能性もある

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とは言え、実はここで話が終わるというわけではありません。2016年までは円ドルレートと日経平均株価は連動する局面が見られており、“円安→株高”の傾向となっていました。

円安になると円ベースの輸入が増えることは先ほど述べましたが、輸出に関してはドルベースでの輸出品の値段が下がることで(価格競争力の改善)、長期的に見ると、より多くの輸出品が売れるようになります。

このため輸出が増えて国内景気が改善(GDPが上昇)する関係があるのです。こうした流れを目指したのがアベノミクスの円安誘導でした。

従って、長期的な傾向を予想すれば“円安→景気拡大・株高”の関係が期待されるのです。図表2で見られるように近年、“逆連動”となっている理由としては、我が国の貿易収支の赤字(輸出より輸入が多い。2018年2019年は貿易赤字)傾向により、円安による輸入のGDPに与えるマイナスの影響が大きいことなど、専門家の間で様々な議論がされています。

しかし長期的な視点に立てば、円安メリットを受ける業界が牽引役となり、景気や株高が期待されます。

円安メリット業種はどれだ

そこで株価騰落率を用いて円安メリット業種を統計的な方法により探って見ました。分析手法の詳細は図表3の注で述べていますが、東証33業種別株価指数を用いて、週次騰落率の円ドルレートとの感応度分析を行っています。

1円円安となったときに上昇率がプラスに大きいメリット業種は、自動車などの輸送用機器が第1位となっています。第4位の電気機器も我が国を代表する輸出業界として注目されます。第2位のガラス・土石製品と第3位の化学に関しては業界のなかでも海外売上高比率が6~7割を超える企業など個別に注目する必要があるかもしれません。

一方、下落率がマイナスに大きいデメリット業種は、輸入する原材料価格が円安で膨らんでコスト高となる業種などとなっています。

今後は、円安で更にメリット業種の株価が上がり、デメリット業種は下落する、という二極化の流れが強まる可能性があります。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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