ロシアの脅威にどんな軍事的備えがありうるか 自民・佐藤氏、立民・渡辺氏、橋本徹氏らが議論

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渡辺周氏(立憲民主党衆院議員・元防衛副大臣):中距離ミサイルの北海道への配備について、国会や政府でいまそのような議論があるわけではない。ウクライナ侵略を断行したロシアの日本に対する脅威は高まっているとの認識は一緒だ。私たちが策定中の安全保障戦略では、潜水艦能力を向上させることを検討している。先日、ロシアは日本海でSLBMを発射した。北朝鮮も昨日潜水艦からミサイルを発射したという。日本の今の潜水艦21隻態勢をもう少し増強しなければいけない。それにより地理的なハンディを詰めることができる。探知や追尾をし、相手が攻撃してくれば当然魚雷で相手を攻撃する。日本海やオホーツク海、東シナ海、太平洋に囲まれたわが国を潜水艦部隊の増強で守る。宗谷海峡も津軽海峡もロシア原潜の通り道だ。北方領土は軍事要塞化しており、潜水艦能力を向上させて我が国を守ることが大事だ。

(画像:FNNプライムオンライン)

攻撃されてからでは遅い

橋下徹氏(コメンテーター、弁護士、元大阪府知事、元大阪市長):潜水艦能力の向上は戦術面だ。自民党が提言する戦略面として反撃能力を高めていくことにも賛成か。

渡辺氏:第一弾撃たれた時は日本有事だ。その有事の時に「ここまではいい、ここまではいけない」などという議論が果たして現実的だろうか。野党というとすぐに「それはダメだ」と言いそうなイメージもたれているが、ウクライナ侵略を受け、プーチン率いるロシアを脅威だと認識している。当然わが国はこの脅威から身を守るための現実的な術を用意しなければいけない。ただ、敵基地攻撃能力といっても、基地かどうかはわからない。潜水艦発射型であれば、今は対応できない。相手が攻撃に着手し、あるいは、世界や防衛省・自衛隊でも研究されているが、着手する寸前に相手をまひさせるような能力を持つ。「攻撃されてからでは遅い。しかし、着手する前に攻撃することはできない。そのグレーゾーンにどう対応するか」は、技術の向上で埋めるしかない。

松山キャスター:自民党の提言では「指揮統制機能」という表現で現地司令部的なものも含めて反撃対象にするという。佐藤氏の案は射程2,500kmの中距離ミサイルを北海道に配備するというものだが、2,500kmでは、モスクワの指揮統制機能までは届かない。

佐藤正久氏(自民党外交部会長・参院議員):法理論上は自衛権の範囲は地理的制限ではないが、現実的に大陸間弾道弾のような戦略レベルのものを持てるのかというと、技術的な問題、現実問題として議論が必要だ。反撃能力はあくまでも日米(同盟)の枠内での保有で、「拒否的抑止」の範疇だ。一撃打たれるまで何にもやらないというわけではない。今まで同様、「座して死を待つ」というわけではない。相手国がミサイル発射をするというのが何らか分かれば、当然、一撃される前に反撃すると(アメリカで)説明した。「歓迎する」「協力する」というのがアメリカ側のスタンスだ。CSISでは、スタンドオフミサイルについて説明して、地上発射型だけでなく、空中発射型、水上発射型、あるいは潜水艦(水中)発射型も必要だと(述べた)。中国は地上発射型短・中距離弾道ミサイルだけで約1900発持っている。日米はゼロだ。巡航ミサイルまで入れると約2500発対ゼロという状況だ。撃ち落とすことが難しいミサイルが出てきた以上、ある一定程度の反撃力をわれわれも持たないといけない。今500kmから900kmのスタンドオフミサイルを国産、あるいは輸入で対応しようとしているが、とても900kmでは足りない。将来的にもう少し長いものを日米で共同開発する、あるいは自国で開発する場合、日本は非常に広く3000kmあるから、北海道に置けば尖閣諸島を守ることもスタンドオフとしてできる。西日本に移動することができれば、相手領域のさらに奥まで届く。ロシアも中国も、北京も一定程度カバーできる。「複合事態」を考えれば、北海道は一つの有力な選択肢だ。極超音速(兵器)のような相手が打ち落としにくいもの、あるいは、終末段階(降下突入時)で回転するようなものであれば、少ない数でいい。単純軌道のものだと相当打ち落とされるから、ある程度数を持たないといけない。「反撃能力」は言葉遊びではなく、実際具体的にどういうものを持つのかという議論を現場レベルの意見を聞きながら、政治が組み上げていくことが大事になる。

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