「ストレスだらけの親」が子に対し有害になる理屈 子どもへの高すぎる期待が引き起こす問題行動

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親が慢性的なストレスに晒されていると、子どもに深刻な影響が及びかねません(写真:Ushico / PIXTA)
ドイツのベストセラー『怒らないをやってみた子育てライフ』の著者で科学ジャーナリスト&メンタルヘルスの専門家ニコラ・シュミット氏は次のように言います。「子どもを叱ってはいけないと言われますが、それはなぜでしょうか? それは効果がなく、子どものためにならないからです」
叱ることは今や多くの研究によって効果がないことが証明されています。しかし、子どもがぐずったり、言うことを聞かなかったりしたときにどうしても怒ってしまう。では、どうすれば叱らないですむのか? 
「ダメだとわかっていても叱ってしまう理由」とその理由から導き出した「叱らない子育てへの方法」を4回にわたりお届けしていきます。

なぜ子どもを叱ってはならないと言われるのでしょうか。

最もシンプルで最も重要な理由は、「効果がない」からです。多くの研究によって、叱ったり、怒鳴ったり、罰を与えたところで、何のメリットもないことが証明されています。

子どものころ、罰をともなう教育や親の過干渉を経験したことのある人は少なくないと思います。けれども、そういう権威主義的な子育てでは、これからの時代を生き抜くうえで不可欠な能力は育まれません。

今後必要とされるのは、柔軟な思考力をもち、困難に立ち向かい、他者と同じ目線で協力することができて、思いやりや連帯感、コミュニティ意識に価値を見いだす人物です。

ストレスを感じる仕組み

私たちに備わっているストレスシステムは元来、有益なものでした。研究者によると、私たちの祖先は生活の大半を「副交感神経モード」で過ごしていたそうです。つまり、あらゆる情報を理性的に分析できる、リラックスした覚醒状態であったということです。

危機的状況に直面したときや、狩猟中の集中力を要する場面においてだけ、短時間「交感神経系」が優位になって、体のストレスシステムにスイッチが入り、闘ったり、逃げたりしたのです。

そして、ストレスのために分泌量が増加したホルモンは、体を動かしているあいだに、ふたたび正常値へと戻っていきました。

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