ごみを拾って「写真をシェア」ハマる人の使命感 拾ったごみを記録「ピリカ」とはいったい何か?

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マイクロプラスチック調査機器アルバトロスセブンを川に沈める様子。(筆者撮影)

調査は2020年4月~2021年3月、北海道から鹿児島県までの16都道府県の川や港湾、湖で実施。自治体や大学の協力を得て水面付近を調べると、120地点のうち112地点でマイクロプラスチックを確認。その量から国内で年間157トンのマイクロプラスチックが流出したと推定した。

分析結果から、その約23%(質量比)が人工芝由来で最多と特定。その対策も人工芝メーカーと一緒に考える。

「マイクロプラスチックのように量を測り、原因を可視化して特定することで、効果的に解決策を打つことができます。そのためにも、ピリカでは「ものさし」を作り、科学的に測るプロセスを大事にしています。現場や課題を抱える人が本気になってくれるまで、問題を絞り込むことを目指しています」と小嶌さん。

プラスチック製品は軽量化に役立つなど便利なもので、すべてが悪ではない。原因を特定し課題を絞り込むことができれば、プラスチックをすべてなくさなければと極端な解決策になることもない。

九州大や海洋研究開発機構(JAMSTEC)などと連携して、「ピリカ」を使った海洋ごみの把握にも取り組みはじめた。投稿されたごみ写真にひも付くごみの種類や製品名などの蓄積データを詳しく分析する予定だ。市民科学的なアプローチを大切に、ごみ問題の啓発にもつなげたいと考えている。

人がやりたがらないことをやる意味

ごみの回収や処理などの事業が、ごみ事業のメジャーリーグだとすれば、ピリカのポイ捨てごみ対策事業はマイナーリーグだと小嶌さんは言う。

「現状のごみ問題で言えば、回収量が流出量にまったく追いついていません。その流出や回収量を科学的に測ることをピリカはしていきたいですし、回収が流出を上回るような解決策を出していきたいです」

子どもの頃、慕っていた祖父から「人がやりたがらないことをやりなさい」と言われて育った。泥臭い仕事でも、そういう仕事にこそ活路や価値があるという意味だったのかと小嶌さんは回想する。現在の事業は、まさにそんな仕事かもしれない。

柳澤 聖子 編集者/ライター

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やなぎさわ せいこ / Seiko Yanagisawa

1979年生まれ、愛知県出身。大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻修了。約16年間、ベネッセコーポレーションにて理科・自然科学系の教材を企画開発。その後、独立しフリーランスの編集者兼ライターに。子育て、家族、働き方、子どものSTEM教育などを中心に執筆活動をおこなう。2児の母。

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