安倍、二階も窮地?衆院「10増10減」に自民党激震 自分たちで決めたルールなのにちゃぶ台返しも

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そうした中、昨年末の自民党選挙制度調査会では「10増10減」への批判が噴出。無所属なのに出席した同党出身の細田衆院議長が、東京都で3増、新潟・愛媛・長崎各県で1減とする「3増3減」案を提起し「地方を減らして都会を増やすだけが能じゃない」と発言した。

細田氏の言動については「細田氏は議員立法の提出者だったはず。そもそも中立を守るべき議長が、法律を無視するような言動は許されない」(選挙制度専門家)との批判が爆発。しかし、細田氏は4月9日の地方講演でも「議長がいろんなことを言うと『黙っておれ』という人もいるかもしれないが、そうはいかない」と自説を曲げない態度を貫く構えだ。

こうした細田氏の言動に各党は不満を募らせ、4月6日に立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長は、自民党の高木毅国対委員長と国会内で会談し「国会を無視する発言だ。看過できない」と抗議。10増10減実施を文書で確約しなければ信頼関係は成立せず、国会運営に影響が出ると伝えた。

また、維新の藤田文武幹事長は記者会見で「非常に不適切な発言だ」と批判。国民民主党の古川元久国対委員長も高木氏に「発言は極めて遺憾」と申し入れ、共産党の穀田恵二国対委員長は「発言撤回が必要」と厳重抗議した。

「岸田1強」なら新たなキングメーカーになる可能性

こうした騒ぎは今後も拡大必至だが、その裏舞台には、次期衆院選後の自民党の権力構造を絡めた暗闘も見え隠れする。現在、同党内でキングメーカー然として振る舞っているのは、首相経験者の麻生太郎副総裁、安倍、菅義偉3氏と、長らく幹事長に君臨した二階氏というのが大方の見方だ。

しかし、岸田首相が「10増10減」案を押し進め、安倍、二階両氏を窮地に追い込めば、「次期衆院選後は自民内の権力構図が一変する可能性」(自民長老)もある。麻生氏も今年9月で82歳と引退間際だけに、参院選が自公勝利で終わり、岸田首相が長期安定政権への道をひらけば、「1強となった岸田氏が、キングメーカーの資格を得る」(同)ことにもなる。

そもそも、2009、2012、2014年の衆院選を「違憲状態」とした最高裁が、最大格差1.98倍の2017年衆院選を合憲と判断したのは、アダムズ方式導入を決めた関連法の成立を評価したからだ。アダムズ方式への不満があっても、「国会自らが決めたルールを実現できなければ国民の政治不信が募るだけ」(選挙制度専門家)というのはまさに正論だ。

ただ、その正論の裏側で繰り広げられそうな自民党内の権力闘争が、「永田町政治の暗部の象徴」(首相経験者)ともみえる。それだけに、参院選と同時進行となる「10増10減」騒動は、次期衆院選までの「政局最大の波乱要因」(同)となるのは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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