約20年ぶり高値を付けたドル・円相場に、早ければゴールデンウィーク(GW)明けにピークを付けるとの見方が出ている。5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でドル高材料がいったん出尽くしとなるほか、日本銀行がインフレ加速を受けて政策修正に傾くとの思惑が浮上する可能性があるという。ただ、当面は上昇が続くとみられ、1ドル=130円の大台突破も意識されている。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、目先「ドル・円は上がりやすい」とみるが、5月3-4日のFOMCで大幅利上げと量的引き締めが決まると、材料出尽くし感が出やすくなると指摘。「GW中で流動性が低い中、利上げを受けて瞬間的にドル・円が上がり、そこでピークを付けるような値動きもあり得る」と予想した。
米金融当局者のタカ派発言や3月FOMC議事要旨を受け、市場は5月会合での0.5ポイントの利上げをほぼ確実視し、さらに年内複数回の大幅利上げを織り込んでいる。また、同会合では、前回2017-19年の量的引き締めのほぼ倍のペースとなる月間最大950億ドルのバランスシート圧縮も承認される見通し。
一方、連休明けの6日には全国の物価の先行指標となる東京都区部の消費者物価指数(CPI)4月分が発表される。携帯電話通信料値下げの影響はく落や国際商品市況高騰により伸びが加速するとみられ、日銀の黒田東彦総裁も4月以降のCPIが2%程度の伸びとなる可能性に言及している。
後藤氏は、欧米金融当局者も物価上昇は一時的との主張から一気にタカ派に転換したとし、物価指数が目標の2%を大きく超えてくれば、日銀も「必要であれば正常化に動きやすくはなる」と話した。
来年4月に任期満了となる黒田総裁の後任人事への思惑がドル・円の上昇にブレーキをかけるとの見方もある。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は、「夏前には後任人事を巡る報道合戦が始まる可能性があり、米金融引き締め終えんの織り込みと次期日銀執行部の金融政策への思惑で、ドル・円はいったんのピークを迎える」と想定している。
ドル・円は今週13日、黒田総裁が金融緩和を粘り強く続けると発言する中で、異次元緩和導入以降の高値、15年6月に付けた125円86銭を突破し、約20年ぶりとなる126円台へ上昇した。これを受け鈴木俊一財務相は、「急な変化は大変に問題である」と述べ、円安けん制のトーンを強めた。
斎藤氏は、15年高値を突破したことで「早晩130円をトライしそうだ」とし、当面はドル高・円安が続くと予想。「夏の参院選が近づき、政府サイドから円安に批判的な声も大きくなりそうで、財務省・日銀は難しいかじ取りを迫られそう」と話した。
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著者:小宮弘子
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