日産が6年後のEV搭載にらむ「全固体電池」の展望 既存電池と比べ何が優れ、何が実用化の壁なのか

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材料に関しては、すでにコレと決まったわけではない。研究は日産の側ではもちろん、材料メーカーのほうでも日進月歩で進んでいるからである。現在の状況は、課題は明らかになり、大まかな方向性は見えたといったところだろう。

そして実用化のもっとも大きなカギを握っていると言ってもいいのが、界面の安定維持である。バッテリー内の正極活物質は充電すると膨張し、放電すると収縮する。電解質が液体であれば、それでも界面は安定性を保ちやすいが固体ではそれは非常に難しくなる。活物質の膨張収縮に追従できずに界面が剥離してしまえば、そこではリチウムイオンの伝導は行われない。「全固体電池は寿命が課題」と言われているのは、つまりこの問題である。

日産がラミネート式に絞る理由

日産の全固体電池はラミネート構造を用いているが、実際にセルの厚みは5%ほども変化するという。ミクロの単位では電極界面の平滑性制御が、マクロではセル拘束面圧の制御が重要になる。セルはリチウムイオンバッテリーの3倍にもなる高圧でプレスされ、ガラスのような硬さに。ただし闇雲に硬くするのではなく、うまく膨張収縮させてやる必要があるところに難しさがある。これらを勘案すると、ラミネート式以外には考えられないというのが日産の考えだ。ちなみにポリマーは、扱いやすいがリチウムイオン伝導性が決定的に足りないそうである。

リチウムイオンバッテリーでもラミネート式を使ってきた日産だが、それは全固体電池まで見通していたわけではなく、土井氏によれば単なる偶然とのこと。しかしながらセルの多積層化などリチウムイオンバッテリーで培った生産技術は、全固体電池にも活かせるため、やはりアドバンテージになっているようだ。

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