初期費用は100円、北海道に吹いた「駅メモ!」旋風 熱量高い鉄道ファンが旧美唄鉄道に押しかけた

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しかし、協力隊には予算も手がけることができる内容も限界がある。

スケッチブックを置くだけのファンイベントから始まった(写真:美唄市地域おこし協力隊)

「100円ショップで購入したスケッチブックを事務所内に置くだけというファンイベントであれば実現ができるのではないか」。そう考えた淺川氏は、「美唄イムラの誕生日を祝うために美唄市に記帳に来ませんか」とSNSによる情報発信を始めた。

さっそく多くの駅メモのプレーヤーからの反響があったほか、新聞社からの取材依頼も舞い込んだ。「新聞記事になったことで、このイベント自体も、その後もいろいろとスムーズになったのは計算外だった」。これが地域を越えた取り組みのきっかけへとつながっていく。

駅メモに登場する別の萌えキャラ「八雲レーノ」の誕生日である2021年11月21日には、同じ北海道の鉄道駅名と同じ苗字を持つ萌えキャラへのリスペクト企画として、地域おこし協力隊事務所に誕生日を祝う記帳台を設置。八雲を訪問する予定の東京在住のプレーヤーが美唄にも足を運んでくれるなどの成果があった。

「駅メモ!」とはどのようなゲームか

駅メモはモバイルファクトリーが開発・運営するスマートフォン用ソーシャルゲームアプリである。でんこと呼ばれる萌えキャラを集めて携帯電話のGPSを使い全国に約9000ある鉄道駅を訪問し、ほかのプレーヤーと数を競い合う。

「美唄イムラ」のキャラクター。多くのファンが美唄市を訪れる

同社がソーシャルゲーム事業に乗り出したのは2009年。同社で広報を担当する永浦亜由美氏によると、当時日本国内ではミクシィやモバゲーなどSNS運営各社がアプリケーション開発環境のオープン化を進めていたことや、アメリカではフェイスブック上で動くブラウザゲームが何億人ものユーザーを集めていたことから「これはスゴイことになるぞ」と感じたことがソーシャルゲーム事業参入のきっかけだった。

そして同社は位置情報ゲームと恋愛シミュレーションゲームの展開に注力。2年間の事業としての赤字の時期と試行錯誤を乗り越えて「位置情報ゲームは継続率が高く長く遊べるジャンルである」と分析、2014年に位置情報ゲームと萌えキャラの要素を掛け合わせた駅メモのリリースに至り、ヒットにつながったという。

現在、同社では、「良くも悪くも移動しないとゲームで遊べない」という駅メモの特性を生かして、交流人口や関係人口の増加といった観点から地方創生に貢献していくことを方針に掲げている。コロナ前の2019年には全国で11のイベントを開催し総参加人数は約36万人。同社では経済効果は15億円に上ったと試算する。

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