「日本株は大幅な円安だから上昇継続」でいいのか 1ドル=120円超のドル高円安が示唆すること
さて、当コラムでは、あまり円相場について述べてこなかったが、筆者が年初に唱えていたドル円相場の見通しを覚えておいでの方も多いかもしれない。
その見通しとは、「世界的な株価下落が年前半に進むため、リスク回避のための円高の様相が強まり、1ドル=100円近辺へのドル安円高となりうるが、その後は株価の回復でドル高円安に転じ、115円近辺に達する」といったものだった。
ところが実際には、せいぜい113円台までの極めて限定的な円高にしかならなかった。それどころか、足元では一時122円台をつける円安に突入している。これについては、見通しを完全に誤った。
1ドル=130円はいきすぎでも、なお円安継続も
今後の見通しについては「現状からさらに若干のドル高円安となる、あるいは現状並みの相場が長く続く」ものの、「1ドル=130円などの大幅な円安が進むとは見込んでいない」という結論だ。
まず、大幅な円安が進むとは見込んでいないという点についてだが、さまざまな分析では、すでにドル高円安がいきすぎていると解釈できる。
日米の物価水準が全般に同程度になるドル円相場を試算したものが、購買力平価だ。実際の円相場は購買力平価から2割以上上下にずれることがあったので、目先の相場見通しを立てるうえでは購買力平価はあまり役に立たない。ただ、過去は多くの期間、プラスマイナス2割の乖離内で円相場が推移していた。長期的な水準の議論はできるだろう。
この購買力平価から実際のドル円相場の乖離率を見ると、今年2月の月中平均では32.0%もの円安方向への乖離となっている。実は過去の乖離率の最高記録は1982年10月の28.4%で、今年2月以外に3割を超える円安方向への乖離が生じたことはなかった。
つまり、日米物価と比較考察では、過去最高水準の円安・ドル高がすでに生じてしまっている(したがって、今後一段の円安の余地は限られている)と考える。
一方、ドルの側から足元の相場を考えると、ドルの名目実効レート(諸通貨に対するドル円相場の加重平均値で、ドルの総合的な強弱を示す)が参考になる。ここ近年は「リスク回避のための円高」のお株を奪うような「リスク回避のためのドル高」が目立つ。
その背景は、世界全体の経済や証券・金融市場を見渡せば、やはりアメリカへの投資が相対的に最も安心感があることだ。したがって、世界のどこかで何かのリスクが台頭すれば、危ういと思われる国から資金を引き揚げ、アメリカに投じるという動きが顕著になっているのだろう。
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