『最後の角川春樹』 角川文化を生み出した “メチャクチャ"な出版人

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最後の角川春樹(伊藤彰彦 著/毎日新聞出版/2090円/319ページ)書影をクリックするとamazonのサイトにジャンプします。
[Profile] いとう・あきひこ 1960年愛知県生まれ。映画史家。『映画の奈落─北陸代理戦争事件』『無冠の男─松方弘樹伝』などの著作で、映画人たちの修羅と栄光を描いて、ノンフィクションの新しい領域を切り開いた。

「あんなに有名な会社の社長がコカインを密輸して捕まるなんて。日本の大人は薬物まみれなのかもしれない」。1993年夏、世間知らずの12歳の私は角川春樹の「コカイン密輸事件」に衝撃を覚え、妄想を膨らませ続けていた。その1週間ほど前に角川が監督した映画『REX 恐竜物語』を見たばかりだった。一緒に見た友人は「社長だけど映画監督でもあるから薬物くらいやっていてもおかしくないだろ」と妙にませた発言をしていたが。

文庫ブームの仕掛け人、映画界の風雲児、俳人、宗教家。角川にはいろいろな「顔」がある。近年は、6回の結婚歴や木刀を1日3万回以上も振ったエピソード、預言者を自認したスピリチュアルな言動など、私生活が注目されることも多い。むしろ、そのような側面しか知らない世代もいるはずだ。本書は、そうした顔はもちろん記しているが、これまで見落とされがちだった出版人としての角川の姿を浮き彫りにしている。

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