20世紀末の日本の金融界の大混乱は、メガバンクの誕生を経て収まったかに見え、そうした視点での金融関連本は一旦下火になった感があった。しかし近年は、2016年刊行の『住友銀行秘史』がベストセラーとなり、同書の著者・國重惇史氏のバンカーとしての告白『堕ちたバンカー』、金融庁の佐々木清隆氏の半生を描いた本書など、金融界で活躍した個人に焦点を当てた本が売れている。
本書の主役で「霞が関のジローラモ」と呼ばれた佐々木氏は、大蔵省(現財務省)への入省以前からかなりの異彩を放っていた。東京大学法学部時代は長髪のアイビールック、英語が得意で公務員試験に優秀な成績で合格した。
評者自身、金融界に長く身を置き、就職活動の際には、当時大蔵省銀行局に所属していた佐々木氏に相談に乗ってもらったりもした。40年にわたって彼の生きざまを近いところで見てきたこともあり、自分の日記を読み返すような臨場感をもって本書を読んだ。
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