紙の出版市場が縮小を続けている。2020年はコミックス「鬼滅の刃」の大ヒットがあったが、16年連続の減少となった。首都圏で約40店の店舗網を持つ書店チェーン・有隣堂の松信健太郎社長に出版業界の構造的問題を聞いた。

首都圏で約40店を展開する有隣堂。書店業で利益をあげるのは困難な状況だという。(記者撮影)
紙の出版物の市場縮小が止まらない。
2020年の推定販売金額は、コミックス『鬼滅の刃』(集英社)の大ヒットもむなしく、16年連続で縮小。ピーク時に2万店を上回った書店数も1万店を割り込み、2019年度は9242店となった。
約40店の書店だけでなく、飲食店やアパレル、理容店などと書籍販売を組み合わせた複合店舗も展開する有隣堂。創業家出身で2020年9月に第7代社長に就任した松信健太郎社長に、出版業界が抱える構造問題について聞いた。
コスト削減はやり切った
――2020年の紙の出版市場は前年比0.9%の減少にとどまりました。出版市場の落ち込みは下げ止まったのでしょうか。
『鬼滅の刃』という化け物作品の登場と、コロナ禍で自宅に押し込められた人々が身近な娯楽を求めて書店に押し寄せたという、2つの偶発的な要素が重なっただけだ。マーケットが成長しているという実感は持てない。
――有隣堂グループは2020年8月期に最終赤字に転落しました。純利益はここ10年間、数億円前後で推移しており、このままでは黒字経営が困難になるのではないでしょうか。
当社の売上高は、書籍とそれ以外でおおよそ半々だ。2021年8月期はGIGAスクール構想でOA機器販売の特需が発生し、良い決算になりそうだ。
一昔前までは書店が利益の中心を担っていたが、今は利益の大半を書店以外が稼いでいる。営業利益率1%を目標に、懸命に(経営の)立て直しを図っているところだ。競合する書店グループの多くも同じ状況で、2%以上の利益率は難しくなっている。
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