悩み多き地銀に3つの道、再編抜きの生き残りは可能か
評者/上智大学准教授 中里 透
平成、とりわけその前半は金融機関にとって激動の時代であった。不良債権の処理に苦しむ中、生き残りをかけて合従連衡が繰り返され、街中で見かける金融機関の看板も大きく様変わりした。1989年の時点では13行を数えた都市銀行は、3つのメガバンクともう1つのグループに集約され、都市銀行という呼称自体が死語となった感がある。
こうした中にあって、相対的に安定を保ってきたのが地方銀行だ。相互銀行から普通銀行へ転換した第二地方銀行については、他業態と同様に大きな変化が生じたが、全国地方銀行協会加盟の64行については、変化は穏やかなものであった。
もっとも、人口減少に伴う顧客基盤の縮小と低金利環境の継続による収益力低下のために経営環境は年々厳しくなり、地銀も大きな変革を迫られつつある。こうした中で刊行された本書には、「悩み多き地銀」の今後の展望が、緻密な現状分析をもとに丁寧に描かれている。
著者によれば、いま地銀は自然淘汰と適者生存の時代を迎えているという。人口減少と低金利に加え、フィンテックの進展による新たな競争相手の出現が、経営環境を一段と厳しいものにしているからだ。このような環境変化への対応策として、本書では「3つの道」が提示されている。
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