今どきの大学を鮮やかに分析 実務家ならではの改革案も
評者/甲南女子大学教授 林 雅彦
評者も「社会人教授」(=実務家教員)である。実務の世界から大学というワンダーランドに足を踏み入れ、そこで体験したあれこれを面白く書いているに違いないと手に取ったが、そういう下衆(げす)な期待は見事に裏切られた。本書はきわめてわかりやすい「今どきの大学」論である。
今どきの大学についてある程度知っている大学関係者(企業の人事担当者なども入ろう)以外の「大学論」の読者は誰か? 子供の大学受験を控えた保護者たちだ。大学卒業以来20〜30年ぶりに大学に目を向けることとなる。これは、実務の世界に20〜30年身を置き、学生時代以来改めて大学という組織の内部に身を置き、大学を眺める実務家教員(=著者)と同じである。だからこそ、そういう層は抵抗なく、かつ興味を持って読み進めることができよう。
大学はこの30年ほどで驚くほど変わった。その要因は著者も指摘するように、少子化とユニバーサル化(大学進学が当たり前となること)である。その結果起きていることは、大学の「学校化」、推薦やAO入試などを利用し一般受験を経ない学生の増大、大学改革の掛け声とそれが遅々として進まぬ現状、「考えない」学生の増加等々。その中でも最も深刻なのは「教養主義の没落」(本書)であろう。
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