無条件降伏で抱えた「ねじれ」被支配下、追求した繁栄、民主
評者/関西大学客員教授 会田弘継
「アメリカの世紀」と呼ばれた20世紀、その超大国がつくった国際秩序に最も強い影響を受けたのは、対極的な文化を持つ日本だった。「不自然な親密さ」とも呼ばれた日米関係について、米国の日本研究の泰斗が考察をまとめた。単なる史書を超え、文明論的スケールを感じる。
米国により破壊し尽くされ、憲法も書き換えて「従属国」になった日本が、いかにして経済復興に集中し大国としてよみがえったか。また、強制された自由と民主主義を市民社会がいかに受け止め、独自の民主主義獲得に苦闘してきたか。本書の読みどころだ。
戦後日米関係の原点は、戦争目標としては異例な「無条件降伏政策」にあり、影響は甚大で今も続いていると著者はみる。その目標のため原爆が使用され、日本の完全非武装化だけでなく米国に似せた国家改造を目指し、憲法まで変えた。こうした政策には当初から米軍や米政府内に強い疑念の声があったという。
新憲法には、占領軍内のニューディール派が理想主義の実現を図った一面があった。だが、当の占領軍内の法律家でさえ「米軍の厚顔ぶりに身震い」し、民主的でない組織である軍を使って民主化を行うという発想の「論理矛盾」を批判している。戦後日本の原点のねじれである。著者は、これにより日本人が「自らの歴史と伝統に従って自身を改造するまたとない機会を奪われ」たことを惜しんでいる。
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