「国境なき医師団」はみんなの寄付が形になってる いとうせいこうが現場をしっかり見てきた

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いとうせいこう 1961年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、84年講談社入社。『ホットドッグ・プレス』編集などを経て86年退社。活字・映像・音楽などマルチに活動。『ボタニカル・ライフ』『想像ラジオ』『ノーライフキング』ほか著書多数。肩書の「作家」は、ものを作る人の意味。(撮影:今井康一)

活動部隊の半数は“非”医療者

崇高で立派で正直近づきがたい存在、と思ってはいないだろうか。著者も最初は“ぼんやりとした尊敬の念”だけだった。事の発端は「男用の日傘が欲しい!」とSNSで発したメッセージ。それが転じて、ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ、南スーダンの現場取材へ。あまり知られていない組織やスタッフたちの姿を等身大でリポートする。

 

──「国境なき医師団」(略称、MSF)とは、紛争地や被災地へ駆けつける医療関係者有志、くらいのイメージでした。

実はスタッフの半数がノンメディカル(非医療者)なんです。現地で活動するにはライフラインの確保、テント・タンク・浄水装置・食糧・毛布・車両・発電機等々が必要になる。インフラづくりや安全管理、裏方全般を担当するロジスティシャン、経理・人事担当のアドミニストレーター、チームをまとめるプロジェクト責任者など、実に多種多様なバックグラウンドの人が参加しているんです。

もう1つの特徴は徹底した独立性。活動資金の9割が個人からの寄付で、政府や製薬会社など企業からの援助は基本断る。何らかの協力を得ても企業名の表示など見返りはなし。あくまでも独立性を担保する。そこに患者を選ばない中立性、民族・宗教・政治的信条を分け隔てなく受け入れる公平性を加えた3点が確保できない場合は、撤退することもあるんです。

──崇高な方々、みたいな冷めた決めつけも間違っていたようです。

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