デザインの歴史探偵 松田行正氏に聞く 『独裁者のデザイン ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法』を書いた

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まつだ・ゆきまさ 1948年生まれ。中央大学法学部卒業。グラフィックデザイナー、「オブジェとしての本」を掲げる出版社、牛若丸の主宰。『眼の冒険』で講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。12年前の著書『はじまりの物語』を契機に、さまざまなデザインの起源の探索を始める。(撮影:今井康一)

価値中立のデザインを権力者が悪用してきた歴史

デザインは使い方によって毒にも薬にもなる──。洗練されていたナチスのデザインを論じた『RED』、黒人、アジア人、ユダヤ人差別を目的とするヘイトポスターなどを取り上げた『HATE!』。今回は4人の独裁者とデザインの関係。洗脳など毒になるデザインを豊富な図版とともに扱った、評論3部作が完結した。

独裁者のデザイン: ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法
独裁者のデザイン: ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、毛沢東の手法(松田行正 著/平凡社/3200円+税/351ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──3部作の中での位置づけは?

「デザインの歴史探偵」を名乗る以上、ナチスは避けて通れなかったので『RED』ができた。執筆の過程で、ナチスの本質は「差別」と考えて著したのが『HATE!』。本書が『RED』の続編で、2冊目の『HATE!』が本流からのスピンオフという形です。

──帯に「デザインに罪はない」。

『RED』の構想はかなり前からあったのですが、デザインに絞るとはいえナチス礼賛と誤解されるおそれがあり、執筆がためらわれました。かなり表現に気を使って出版したところ、心配した反応もなく、やれやれ、と。ところが、ある大学の社会人講座で客観的なデザインの評価と銘打っているのに、事後アンケートの1枚に「ナチス礼賛のようだ」とびっしり書かれショックでした。今回は帯の惹句で「問題はデザインを使う側にある」と先手を打った(笑)。

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