建物と住民の2つの「老い」で朽ちていくマンション。生活を脅かすスラム化の危機はひとごとではない。
事例1|旧住宅公団分譲の大規模団地
団地内の商店街はシャッター街に
・千葉県船橋市 ・築年数/48年 ・戸数/1098戸(51棟)・階数/5階
千葉県船橋市にある築48年、1098戸の大規模団地。ガタンガタンとカートを引きずる音を立てながら、80代の女性が階段を下りてきた。足も引きずっている。1カ月前から神経痛が悪化し、バスで病院に向かうところだと言う。
「空き家が増えて若い人は入ってこないね。なにしろ移動が不便だから」。最寄り駅からバスで20分以上かかるうえ、5階建てだがエレベーターがない。団地内の商店街は、ほぼシャッターが閉められ、人けがない。住民の高齢化に加え、近年空き家も増加。特に不便な上層階は持ち主が手放すことが多い。建設当初から住む女性(70代)は言う。「ここは老人村」。
外壁は半世紀近い年月を感じさせない。が、排水管は一度も取り替えたことがないという。上下が空き家になると余計にさび付き、ものが詰まると住民は嘆く。古いマンションに共通するのは、見た目より内側の崩壊だ。外壁の塗り替えや屋上の防水工事はできても、排水管の改修は構造上困難を極める。古くなれば破裂の危険性があり、時限爆弾を抱えている状態だ。
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