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井上ひさし氏に学ぶ日本語の技法(6) 既知と道の情報の区別に敏感になる

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日本語は助詞の使い方が難しい。特に面倒なのは、「は」と「が」の使い方だ。

外国人用の日本語文法では、「は」はトピックマーカー(topic marker、井上ひさし氏の用語では題目)と見なされている。東京大学日本語教育センターのホームページでは、トピックマーカーについて次のような説明をしている。

〈 (2) 田中さんはお茶を飲みました。

(3)お茶は田中さんが飲みました。

(2)と(3)の違いは、簡単にいえば、(2)は「田中さん」の話をしているときに使い、(3)は「お茶」の話をしているときに使う、ということです。つまり、(2)は「田中さんは何を飲みましたか。」What did Tanaka drink?(または「田中さんは何をしましたか。」What did Tanaka do?)、(3)は「お茶は誰が飲みましたか。」Who drank tea? という質問に答えるような場合に使うわけです。

どちらの場合も、実際には質問の文はなくてもかまいませんが、要するに、(2)は「田中さん」が関心の対象になっている場合に、(3)は「お茶」が関心の対象になっている場合に、使うわけです。(2)については「田中さん」と「鈴木さん」を対比して使う、(3)については「お茶」と「コーヒー」を対比して使う、というような使い方もありますが、「鈴木さん」や「コーヒー」を持ち出さなくても、要するに、「田中さん」を話題にして述べているか、「お茶」を話題にして述べているかということが、(2)と(3)の違いだといえます。

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