ドストエフスキーの新訳で知られ、スターリン体制と芸術家の関係を研究してきた著者。最新刊では、人々が本音を語れなかった時代に、ショスタコーヴィチが自らの音楽に何を刻み込んだのかを読み解き、その人生に迫っている。
──音楽の音そのものやフレーズの一つひとつの意味を丹念に解き明かしていく手法に驚きました。
文学者としてのメンタリティで作曲家の心を読み解いていこうとした。ショスタコーヴィチは10代からドストエフスキーを読んでいて、おそらくどんな作曲家よりも文学的だった。20世紀の多くの作曲家が12音技法などを発展させ音楽から意味を剥奪していく中で、彼は意味が大事だと考え、どうやって意味を持ち込むか、そこに徹底してこだわった。音を限りなく言葉に近づける。弦楽四重奏曲を聴いていると、もう音が言葉に転化して翻訳できそうなほど語りかけてくる。最高傑作といわれる交響曲第4番や第8番では、音ではなくドラマを書いている。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
ログイン(会員の方はこちら)
無料会員登録
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
トピックボードAD
有料会員限定記事