父親は本当にギャンブル好きだった。それで借金を繰り返して、気づいたときには1億円に膨らんでいた。当時は神戸に住んでいたが、もう返せなくなって、俺たち家族も夜逃げ同然で引っ越すことになった。山口、九州……と転々としてね。それでも父はギャンブルをやめない。もう死ぬまでやめなかった。
借りては返して、また借りてという繰り返しだ。俺はその借金を引き継ぐ形で相撲界に入った。相撲は一生懸命取ったけど、借金だらけという身の上を思うと、「もうどうでもいいや」と投げやりになることもあったよ、それは。嫌な気持ちは消したくても消せない。毎日毎日、ただ頑張って、その後は何とか年寄株を買って、後進を育てたい、というのが夢。それは結局、夢でしかなかった。
でもはっきり言いたいのは、八百長だけはなかったよね。それでカネをもらうなんてことは……。それだけは一度も心が揺れたことはなかったんだ。土俵で転んで、(借金を)返せばそれは楽なんだろうけど、それだけはやれない。俺にも「相撲愛」があったんだと思う。本当の愛だよね。
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