縮小する出版市場。その先にある新時代を目指し、革命の烽火(のろし)が上がり始めた。
日本でもアマゾン「キンドル」のような電子ブックがブレークする日は到来するのだろうか。出版界の声は総じて冷ややか。なぜなら、「日本では新刊コンテンツを集めることができないから。これまでも死屍累々だ」(大手出版社社長)。
記憶に新しいところでも不幸な失敗例がある。ソニーは2004年4月、イー・インク社の電子ペーパーを搭載した電子ブック「リブリエ」を世界に先駆けて日本で発売。キンドルより3年以上早く、電子ブックビジネスに挑戦した。しかし、コンテンツがほとんど集まらなかったうえ、配信方法も売り切りではなく2カ月間の期限付き貸し出し。使い勝手が悪かった。結局、07年5月には販売を中止。今年2月にはコンテンツ配信事業会社も清算している。
その事情は、今でも変わっていない。米国では出版物は完全な自由価格。卸値の設定についても、経済原則にのっとり、大量販売するバーンズ&ノーブル、ボーダーズのような大規模チェーンやアマゾンを優遇しなければならない。そのため、出版社はバイイングパワーに基づく卸値の管理を当たり前にこなしている。しかも売れ筋の本であれば、新刊書籍であってもハードカバーに加え、ペーパーバック、CDブックなど複数のバージョンを取りそろえ、それを同時発売するのが普通だ。すでにマルチメディア対応を行っており、そこにキンドルやソニーの「リーダー」が現れても、手間が一つか二つ増えるだけにすぎない。
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