大手法律事務所が、アジア拡大を急ぐワケ
大手法律事務所がアジアへの進出を加速している。
4大法律事務所の一角、長島・大野・常松法律事務所は2010年10月、東南アジアの主要都市に拠点を持つ豪大手アレンズ・アーサー・ロビンソンと提携、12月には中国大手とも提携した。国内最大手の西村あさひ法律事務所も、4月に北京、10月にはベトナムに事務所を開設。ほかの事務所も積極的に弁護士をアジア地域に派遣している。
日本企業のアジア進出が進む中、「ここ数年、企業からの、アジアでの法律業務に対するニーズが急速に高まっている」(長島の藤縄憲一マネージングパートナー)と各事務所の幹部は口をそろえる。
ただ現地で直接、法律業務を行えるのは、その国の資格を持つ者に限られ、日本の弁護士がアジアで自ら法律業務を行うことはできない。日本の事務所が事業を拡大するには、現地の事務所と提携などするよりほかない。
日本の事務所の多くはすでにアジア関連の業務を数多く手掛けている。ここへ来て拡大を急ぐのはむしろ、国内市場の先細りに対する危機感の高まりからだ。
大手事務所は長らく需要拡大の恩恵を受けてきた。国内のM&A件数は、M&A助言会社のレコフによると、1990年代前半は500件前後だった。それが、ピークの2006年には2700件超まで増大。「国内だけで手いっぱい。海外まで手が回らなかった」(藤縄氏)。
ところが、リーマンショックの影響などで、足元の需要は縮小。企業のコスト意識が高まっていることもあり、「事務所全体で扱う件数はそれほど変わっていないが、一つの案件の規模は小さくなっている」(西村あさひの小杉晃執行パートナー)。