民主党大統領候補の本命ヒラリー・クリントン前国務長官が掲げる経済政策は、バラク・オバマ政権の路線を継承した堅実な内容である。気掛かりなのは、通商政策などに内向き志向が感じられる点だ。
トランプ、サンダースと懸け離れた堅実な政策案
「守れない約束をすべきではない」。クリントン氏は、今年2月のテレビ討論会で、そう強調した。「実現可能性を重視した堅実な政策」という、クリントン氏の経済政策のエッセンスが凝縮された発言である。
非主流派候補が躍進する異例の選挙戦において、クリントン氏の堅実さは異色である。民主党の指名候補の座を争うバーニー・サンダース上院議員のみならず、共和党で旋風を巻き起こしている実業家のドナルド・トランプ氏などは、現実離れした極端な政策案を掲げる。
典型が税制である。サンダース氏は、10年間で15兆ドルを超える大増税を提案する。トランプ氏の提案は、10年間で10兆ドル近い大減税である。
クリントン氏の提案は、10年間で1兆ドル程度の増税にとどまる。図1のように、所得階層ごとの増減税の規模でも、サンダース案がすべての階層で増税、トランプ案がすべての階層で減税となる一方、クリントン案の増税対象は富裕層に集中する。中低所得層向けの減税が追加提案される見込みだが、1兆ドルの増税で賄える範囲となり、全体としては財政赤字を増やさない穏当な内容になりそうだ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら