国債の大量買い入れやマイナス金利の導入で主要国の金融政策は未踏の領域に入った。中央銀行抜きに経済は維持できないのか。緩和依存症に陥った世界経済の病理を解剖する。
より過激なヘリマネ論も台頭
焦り出した政策当局、マーケット 「金融緩和が効かない!」
「主要国経済は日本化している」
3月22日に開かれた日本政府の第3回国際金融経済分析会合で、ポール・クルーグマン米プリンストン大名誉教授はこう持論を展開した。
第1回の会合では、ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授が世界経済の現状を「大低迷(グレート・マレイズ)」と呼んだ。
二人のノーベル賞経済学者の表現は、今世界の政策当局が何に悩んでいるのかを端的に示している。
「金融政策で克服可能」という自信が崩壊
それを示したのが図1だ。日米欧(ここでは欧州としてドイツを例示)について、青の太線が期間ごとの平均実質GDP(国内総生産)成長率、赤線が中央銀行の政策金利の推移を示す。一目瞭然のように、政策金利はどんどん下がって今やゼロ金利状態だが、GDP成長率は低金利によって上向くどころか、むしろ徐々に低下している。
金利だけではない。図1中ほどのようにゼロ金利と同時に各国の中銀は国債を民間銀行から大量購入する量的緩和政策を開始し、おカネをジャブジャブにするマネタリーベースの急拡大を推進している。2008年以降のFRB(米連邦準備制度理事会)の量的緩和第1~第3弾や13年以降の日本銀行の異次元緩和が代表例だ。が、これも実体経済への効果は薄い。
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