「駐在武官」を機能させるために必要なこと

増員だけでは強化にはならない

今回防衛駐在官増員はこのような対外情報能力の欠除に危機感をもった首相官邸の意向が働いているようだ。もう一つの理由は武器禁輸見直しによる、武器の輸出や共同開発を促進するためである。このため増員は「潜在顧客」であるインドやオーストラリアに厚い布陣となっている。

また、アフリカ大陸は今後大きく経済的な成長が期待でいるエリアであることなどからアフリカ諸国と、アフリカと太い情報のパイプを持つ欧州主要国への増員となった。アフリカへの防衛駐在官の増員は中国のアフリカへの経済、資源外交、軍事をパッケージ化した動きの監視も視野に入れたものだろう。さらに紛争多発地帯であり、今後自衛隊が平和維持活動などで派遣される可能性が高い地域でもあり、そのための情報収集も平素から行う必要がある。

今年南アフリカに防衛駐在官が配備されるまで、サブサハラ以南に防衛駐在官はまったく存在していかった。1990年代から中国はアフリカ大陸において活動を活発化してきたが、その軍事的な情報を取る術を我が国は保有してこなかった。これではまともな外交政策が策定できるはずもない。

またロシアに対する警戒は冷戦終結後低調になったが、昨今のウクライナ問題や中国との関係などもあり、防衛省のロシア及びその周辺国への関心は再度強くなっている。

これまでの武官の通常の仕事に加えて、防衛協力、装備協力などが増加が見込める国では人員を増だけではなく、技術に詳しい人員の増員も必要だ。

2014年度の防衛駐在官増員ではインド2名、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアに各1名が増員された。また南アフリカ、アルジェリア、エチオピア、ケニア、ジプチ、ナイジェリア、モロッコ、ブラジルに新規に防衛駐在官派遣が決定された。

5カ国では削減

ただし予算との不足のためにポーランド、ウクライナ、ノルウェー、フィンランド、スーダンの防衛駐在官が各1名ずつ削減されており、14名増員、5名減員で実質9名の増員となっている。

これにより39大使館2代表部に、現在合計58名(陸自26名・海自16名・空自16名/定員ベース)の駐在防衛官が派遣されている。

防衛省は平成27(2015)年度予算で、ポーランド、ウクライナ両国に対する防衛駐在官を復活させる。このため両国に各1名の防衛駐在官を再配置する。本年度予算で両国から防衛駐在官を引き上げたのは予算と定員の制限のためだが、いかにも泥縄であり、先見性がなかったと言わざるを得ない。防衛省の情報に対する投資の姿勢が伺えるといえよう。

スーダンについては当面、PKO要員が南スーダンに在留することから、これをもって防衛駐在官に代え、スーダン分の防衛駐在官の枠を南アフリカに振り替えた。

これに加えて平成27(2015)年度予算ではオーストラリア、インドに各1名の増員を計画している。これは先に述べたようにインド、オーストラリアは防衛装備協力、国産装備の輸出先として、有力視されているという事情も関係している。

また平成27(2015)年度予算概算要求には、防衛駐在官の事前研修の強化に伴う経費も盛り込まれている。事前研修は平成25年度の5週間から、平成26年度は8週間に拡大される。この他小平学校で1週間の情報保全研修が行なわれている。これは防諜や情報の取り扱い、いわゆるハニートラップなどへの対処なども含まれている。

さらに着任後スムーズに職務を遂行するために平成27年度は防衛駐在官が赴任前に、現地を視察する制度の導入も計画している。このため研修費は平成26年度の1580万円から2600万円への増額を要求されている。また別途現地視察費730万円も盛り込んでいる。更に将来的には世界の各地域、例えば欧州、アフリカといったエリアごとに派遣されている防衛駐在官が集まって情報を交換する会議の開催も計画されている。

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